中央値検定(メディアン検定) Last modified: May 16, 2002
例題:
「表 1 のような観察値が得られた。両群の母代表値(母中央値)に差があるかどうか検定しなさい。」
表 1.二群の観察値
第 1 群の観察値 | 1.2,1.5,1.8,2.6 |
第 2 群の観察値 | 1.3,1.9,2.9,3.1,3.9 |
検定手順:
- 前提
- 帰無仮説 $H_0$:「2 群の母代表値(母中央値)に差はない」。
- 対立仮説 $H_1$:「2 群の母代表値(母中央値)に差がある」。
- 有意水準 $\alpha$ で両側検定を行う(片側検定も定義できる)。
- 2 群のデータをこみにして,中央値を求める。
例題では,データを小さい順に並べると 1.2,1.3,1.5,1.8,1.9,2.6,2.9,3.1,3.9 となるので,中央値は 1.9 である。
- 各群のデータを中央値以上と中央値未満に分け,以下のような分割表を作る。
表 2.$2 \times 2$ 分割表
| 中央値以上 | 中央値未満 | 合計 |
第 1 群 | $a$ | $b$ | $a+b$ |
第 2 群 | $c$ | $d$ | $c+d$ |
合計 | $a+c$ | $b+d$ | $n$ |
例題では,
表 3.$2 \times 2$ 分割表
| 中央値以上 | 中央値未満 | 合計 |
第 1 群 | 1 | 3 | 4 |
第 2 群 | 4 | 1 | 5 |
合計 | 5 | 4 | 9 |
- 得られた分割表に対して,独立性の検定 を行う。すなわち,群と中央値より大きいか小さいかが独立であるかどうかを検定するわけである。
例題では,独立性の検定の結果,有意確率は $P = 0.0989$ となり,帰無仮説は棄却できない。
注意点
- 分割表に対して独立性の検定を行うわけであるから,独立性の検定 を適用するための前提条件が満たされている必要があるので,場合によっては フィッシャーの正確確率検定 を適用しなければならないこともある。
- 群が複数あっても中央値検定を行うことができる。すなわち,$k$ 群の中央値検定は $k \times 2$ 分割表の検定を行うことになる。
- 「中央値以上か未満か」という分け方と,「中央値を超えるか中央値以下か」という分け方では異なった分割表ができるので,結果も変わる可能性がある。有意確率が有意水準と近い値の場合は両方の分割表を検討する必要があるかもしれない。
- この検定は,観察値の持つ情報の一部分しか利用しない(中央値より大きいか小さいかという単純なデータに変換する)ので検出力は弱い。
演習問題:
応用問題:
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