いくつかの注意点 Last modified: Jan 07, 2009
- 以下のいずれかに該当する分割表に対して $\chi^2$ 検定を行ったり,$\chi^2$ 値から導き出される関連性の指標を用いる場合には注意が必要である(Cochran, W. G.: Some methods for strengthening the common $\chi^2$ tests. Biometrics, 10, 417-451, 1954.)。
- 期待値が 1 未満の桝目が 1 つでもある。
- 期待値が 5 未満の桝目が全体の桝目の数の 20 % 以上ある。
このような場合には,
- カテゴリーを併合する。
- カテゴリーが併合できないような場合には,他の検定手法の適用の可能性を検討すべきである($2 \times 2$ 分割表よりも大きい分割表の場合にも「フィッシャーの正確確率検定」が適用できる)。
- いずれも不可能な場合には,結果の解釈・適用において十分な検討が必要である。
- 教科書によっては 2 種類の $\chi^2$ 検定が示されている。すなわち,「いくつかの群で,ある変数の分布に差があるかどうかの検定」と,「2 変数が独立であるかどうかの検定」である。両者は形式的には全く同じであるが,データの採取法により両者は区別される。例えば,「男女の 2 群で食物嗜好の回答の分布が異なるか」を知りたいときに,まえもって $m$ 人の男子と $n$ 人の女子を対象として調査することを決めてからデータを集めた場合には男女で分布が異なるかどうかの検定になる。これに対して,$N$ 人の対象者について調査し,得られたデータを性別と回答別に集計した場合には,性別と食物嗜好が独立であるかどうかの検定になる。疫学調査でいえば,前者は「後向き調査」や「前向き調査」から得られる分割表の分析であり,後者は「断面調査」により得られる分割表の分析である。
- 「二群の比率の差の検定(正規分布による検定)」は,$2 \times 2$ 分割表に対する独立性の検定( $\chi^2$ 検定)と等価な検定である。
- 検定結果が有意になるように(あるいは,逆に有意にならないように)カテゴリーの分割方法(分割点)を変えたり,カテゴリーの併合を行ったりしてはいけない。
- 帰無仮説が棄却され「2 変数は独立ではない」となった場合にも,どのような関連があるかは期待度数と観測度数を比較して考察しなければならない。必ずしも線形の関連があるわけではない。
直前のページへ戻る E-mail to Shigenobu AOKI