フリードマン検定     Last modified: Dec 19, 2018

対応のあるデータにおいて,代表値間に差があるかどうかを検定する。行と列を入替えることで,被験者間に差があるかどうかを検定できる。


例題

 「表 1 のようなデータがある。4 種の肥料間で収量に差があるか検定しなさい。」

表 1.フリードマン検定が対象とするデータ
肥料
  品種     $B_{1}$     $B_{2}$     $B_{3}$     $B_{4}$  
$A_{1}$ 9  17  12  16 
$A_{2}$ 5  21  16  11 
$A_{3}$ 7  19  6  9 
$A_{4}$ 8  11  11  8 
$A_{5}$ 9  8  9  9 
$A_{6}$ 2  4  5  8 
$A_{7}$ 3  8  10  9 


検定手順:

  1. 前提

  2. $r$ 種類の対象に $c$ 種の処理を行い,観察値 $X_{ij}$ を得たとする $(i=1, 2, \dots , r\ ; \ j=1, 2, \dots , c)$。 $r$ は row,$c$ は column の略

    表 2.記号の定義
    被験者 処理1 処理2  $\dots$  処理 $c$
    1 $X_{11}$ $X_{12}$ $\dots$ $X_{1c}$
    2 $X_{21}$ $X_{22}$ $\dots$ $X_{2c}$
    $r$ $X_{r1}$ $X_{r2}$ $\dots$ $X_{rc}$

    例題では,$r = 7$,$c = 4$ である。

  3. 各被験者ごとに観察値 $X_{i1} , X_{i2}, \dots , X_{ij}, \dots , X_{ic}$ の小さい順に順位 $O_{ij}\ (1 \leqq O_{ij} \leqq c)$ をつける(同順位がある場合には平均順位をつける)。

  4. 表 3 に示すように,各処理ごとに順位の和 $R_{j}$ を計算する。

    \[ R_j = \sum_{i=1}^r O_{ij} \]

    表 3.順位
    被験者 処理 1 処理 2  $\dots$  処理 $c$
    1 $O_{11}$ $O_{12}$  $\dots$  $O_{1c}$
    2 $O_{21}$ $O_{22}$  $\dots$  $O_{2c}$
    $\vdots$ $\vdots$ $\vdots$ $\vdots$ $\vdots$
    $r$ $O_{r1}$ $O_{r2}$  $\dots$  $O_{rc}$
    順位の合計 $R_{1}$ $R_{2}$  $\dots$  $R_{c}$

    検算:$\displaystyle \sum_{j=1}^c R_j = \frac{r \ c \ (c+1)}{2}$

    例題の場合,表 4 のようになる。

    表 4.表 1 のデータのフリードマン検定
    肥料
     品種   $B_{1}$   $B_{2}$   $B_{3}$   $B_{4}$   合計 
    $A_{1}$ 1  4  2  3 
    $A_{2}$ 1  4  3  2 
    $A_{3}$ 2  4  1  3 
    $A_{4}$ 1.5  3.5  3.5  1.5 
    $A_{5}$ 3  1  3  3 
    $A_{6}$ 1  2  3  4 
    $A_{7}$ 1  2  4  3 
    $R_{j}$ 10.5 20.5 19.5 19.5 70 
    $R_{j}^{2}$ 110.25 420.25 380.25 380.25 1291 

  5. 次式により検定統計量を求める。$\chi^2_0$ は,自由度が $c - 1$ の $\chi^2$ 分布に従う。

    \[ \chi_0^2 = \frac{12}{r \ c \ (c+1)}\sum_{j=1}^c R_j^2-3\ r\ (c+1) \] 例題では, $\chi^2_0 = 5.65714$ であり,自由度 $3$ の $\chi^2$ 分布に従う。

    以上は多くの統計学の教科書に書かれているものであるが,R や SPSS では,検定統計量に対しても同順位の補正をしたものを求めている。 \[ \chi_0^2 = \frac{12 \displaystyle \sum_{j=1}^c (R_j-r\ (c+1)\ /\ 2)^2}{r\ c\ (c+1)-t\ /\ (c-1)} \] ただし,$t$ は $R$ の各行の要素について,ある値と同じ値となるものの数を $t_0$ としたとき $t_0^3-t_0$ としたものについての,行全体での総和である。
    例では,$A_4$ において 1.5 と 3.5 の同順位がそれぞれ 2 個なので,$(2^3-2) + (2^3-2)) = 12$,および,$A_5$ において 3 の同順位が 3 個なので $3^3-3 = 24$ であり,合計して $t = 36$ である(同順位がない値の場合は $1^3-1=0$ である)。
    したがって,$\chi_0^2 = \displaystyle \frac{12 \{(10.5-17.5)^2+(20.5-17.5)^2+(19.5-17.5)^2+(19.5-17.5)^2\}}{7\cdot 4 \cdot 5-36\ /\ 3} = 6.1875$ である。
    行単位で同順位が全くない場合は,$\chi_0^2$ を求める 2 つの式は全く同じ値になる。

  6. 有意確率を $P = \Pr\{\chi^2 \geqq \chi^2_0\}$ とする。
    $\chi^2$ 分布表,または $\chi^2$ 分布の上側確率の計算を参照すること。

    例題では,自由度 $3$ の $\chi^2$ 分布において,$\Pr\{\chi^2 \geqq 7.81\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{\chi^2 \geqq 5.65714\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.1295$)。

    同順位を考慮した場合は,正確な有意確率は$P = 0.1028$ である。

  7. 帰無仮説の採否を決める。

    例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),同順位を考慮した場合もしない場合も,$P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「肥料間の差があるとはいえない」。

 なお,処理の種類が少ない場合($c = 3,4,5$ の場合)には統計数値表を参照して棄却限界値を求め,以下の規則で決定を下す。

注: 全体として処理間に差があるときには,どの処理間に差があるかについて多重比較(対比較)を行うことができる。

・ R で計算してみる


演習問題

 「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 5 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを $5\%$ の有意水準で検定しなさい。」

表 5.薬剤投与量による効果
投与量
被検者 0mg 10mg 20mg 40mg 80mg
1 5 60 35 62 76
2 24 44 74 63 76
3 56 57 70 74 79
4 44 51 55 23 84
5 8 68 50 24 64
6 32 66 45 63 46
7 25 38 70 58 77
8 48 24 40 80 72


問題1 帰無仮説はどれか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:投与量による差はない b:投与量による差がある
解答欄:    

問題2 $\chi^2_0$ 検定統計量を求めなさい。答えは小数点以下 2 桁目で四捨五入した値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

解答欄:    

問題3 求められた $\chi^2_0$ 検定統計量は,自由度いくつの $\chi^2$ 分布に従うか,答えを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

解答欄:    

問題4 有意確率は $0.05$ より大きいか小さいか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:0.05 より大きい b:0.05 より小さい
解答欄:    

問題5 有意水準 $5\%$ で検定を行うとき,帰無仮説は棄却できるかできないか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:棄却できる b:棄却できない
解答欄:    

問題6 最終的な結論はどうなるか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:投与量による差があるとはいえない b:投与量による差がある
解答欄:    

・ R で計算してみる


応用問題


・ 計算プログラム [R] [Python]
・ 直前のページへ戻る  ・ E-mail to Shigenobu AOKI