フリードマン検定 $\Longrightarrow$ 多重比較     Last modified: Aug 12, 2003

 処理全体の差の検定が有意なときには,シェッフェの方法による対比較を行うことができる。


例題

 「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 1 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを $5\%$ の有意水準で検定したところ,有意な差があると認められた。このとき,どの処理間に有意差があるかを多重比較により検討しなさい。」

表 1.薬剤投与量による効果
投与量
被検者 0mg 10mg 20mg 40mg 80mg
1 5 60 35 62 76
2 24 44 74 63 76
3 56 57 70 74 79
4 44 51 55 23 84
5 8 68 50 24 64
6 32 66 45 63 46
7 25 38 70 58 77
8 48 24 40 80 72


検定手順:

  1. 前提

  2. 各被験者ごとに観察値 $X_{i1}$ , $X_{i2}$ , $\dots$ , $X_{ij}$ , $\dots$ , $X_{ic}$ の小さい順に順位 $O_{ij}\ (1 \leqq O_{ij} \leqq c)$ をつける(同順位がある場合には平均順位をつける)。

    例題では表 2 のようになる。

    表 2.薬剤投与量による効果の順位付け
    投与量
    被検者 0mg 10mg 20mg 40mg 80mg
    1 1 3 2 4 5
    2 1 2 4 3 5
    3 1 2 3 4 5
    4 2 3 4 1 5
    5 1 5 3 2 4
    6 1 5 2 4 3
    7 1 2 4 3 5
    8 3 1 2 5 4

  3. 各処理の順位の平均と分散を次式で定義する。

    \[ \bar{R}_j = \sum_{i=1}^r \frac{O_{ij}}{r}=\frac{R_j}{r} \] \[ V=\sum_{i=1}^r \sum_{j=1}^c \left ( O_{ij}-\frac{c+1}{2} \right )^2 \] 例題では,$\bar{R}_1 = 1.375$,$\bar{R}_2 = 2.875$,$\bar{R}_3 = 3.000$,$\bar{R}_4 = 3.250$,$\bar{R}_5 = 4.500$。また,$V = 80$。

  4. 処理 $i$ と 処理 $j$ の対比較のための検定統計量 $S_{ij}$ は次式で定義される。

    \[ S_{ij} = \frac{r^2\ (c-1)\ (\bar{R}_i-\bar{R}_j)^2}{2V} \] 例題では,処理 1 と 処理 2 の対比較を行うために,$S_{12} = \displaystyle \frac{8^2 \cdot ( 5 - 1 )\cdot ( 1.375 - 2.875 )^{2} } {2\cdot 80} = 3.6$。その他の組合せも同様にして,表 3 を得る。

    表 3.処理間の対比較の結果
    条件 $S_{ij}$ 有意確率($P$ 値) 検定結果
    処理 1 : 処理 2 3.600 0.4628369 n.s.
    処理 1 : 処理 3 4.225 0.3764110 n.s.
    処理 1 : 処理 4 5.625 0.2289584 n.s.
    処理 1 : 処理 5 15.625 0.0035659 **
    処理 2 : 処理 3 0.025 0.9999225 n.s.
    処理 2 : 処理 4 0.225 0.9941270 n.s.
    処理 2 : 処理 5 4.225 0.3764110 n.s.
    処理 3 : 処理 4 0.100 0.9987909 n.s.
    処理 3 : 処理 5 3.600 0.4628369 n.s.
    処理 4 : 処理 5 2.500 0.6446358 n.s.

  5. $S_{ij}$ は,自由度 $c - 1$ の $\chi^2$ 分布に従う。

    例題では,表 3 に示した $S_{ij}$ はすべて,自由度 $4$ の $\chi^2$ 分布に従う。

  6. 有意確率を $P_{ij} = \Pr\{\chi^2 \geqq S_{ij}\}$ とする。
    $\chi^2$ 分布表,または $\chi^2$ 分布の上側確率の計算を参照すること。

    例題では,処理 1 と 処理 2 の対比較をするときに,自由度 $4$ の $\chi^2$ 分布において,$\Pr\{\chi^2 \geqq 9.49\}= 0.05$ であるから,$P_{ij} = \Pr\{\chi^2 \geqq 3.6\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P_{ij} = 0.4628369$)。他も同様。

  7. 帰無仮説の採否を決める。

    例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),処理 1 と 処理 2 の対比較をするときに,$P_{ij} \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「処理 1 と 処理 2 の間に差があるとはいえない」。
    他も同様に行う。

  8. 全ての群の組合せについて対比較を行ったとき,検定全体の危険率が $\alpha$ 以下であることが保証される。

    例題では,「処理 1 と 処理 5 の間には有意な差があるが,他の処理間には差があるとはいえない」と結論することが,危険率 $5\%$ の下でいえる。

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