対応のある場合の比率の差の検定を行う。
例題:
「内閣の支持率調査で,同じ対象者に 1 月と 4 月の 2 回調査をした結果は表 1 のようになった。 この 3 ヵ月間に支持率に変化があったといえるかどうか検定しなさい。」
4 月 | ||||
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支持する | 支持しない | 合計 | ||
1 月 | 支持する | 48 | 28 | 76 |
支持しない | 35 | 53 | 88 | |
合計 | 83 | 81 | 164 |
検定手順:
条件 2 | ||||
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特性を持つ | 特性を持たない | 合計 | ||
条件 1 | 特性を持つ | $a$ | $b$ | $a+b$ |
特性を持たない | $c$ | $d$ | $c+d$ | |
合計 | $a+c$ | $b+d$ | $n$ |
例題では,$b = 28$,$c = 35$ である。1 月,4 月における比率はそれぞれ $0.463$,$0.506$ である。
\[ \displaystyle \chi^2_0 = \frac{(\, b - c \,) ^{2}}{ b + c } \] 連続性の補正を行うときは次式を使う。
\[ \chi^2_0 = \displaystyle \frac{\left ( \left|\ b - c\ \right |- 1 \right ) ^{2}}{ b + c} \] ただし,$b = c$ のときは $\chi^2_0 = 0$ とする。
例題では,$b + c$ は十分に大きいので,マクネマーの検定を適用できる。
$\chi^2_0 ≒ 0.778$ となる(連続性の補正を行った場合は,$\chi^2_0 ≒ 0.571$)。
例題では,自由度 $1$ の $\chi^2$ 分布において,$\Pr\{\chi^2 \geqq 3.84\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{\chi^2 \geqq 0.77\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.378$)。
連続性の補正を行ったときは,正確な有意確率は $P = 0.450$ となる。
$N = b + c$,$m = \min (b, c)$ とすると,有意確率 $P$ は,二項分布に基づいて次式で計算される。
\[ P_0 = 2\ \displaystyle \sum_{i=0}^m\ {}_NC_i\ \left(\,\frac{1}{2}\right)^N \] 例題ではマクネマー検定でよいが,二項検定はいつの場合でも適用できる。有意確率は,$P = 0.450$ となる。 なお,二項検定は$F$ 分布による母比率の検定と等価である。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「支持率に変化があったとはいえない」。
演習問題:
上の例解の結果について考察しなさい。近似法であるマクネマー検定で,連続性の補正を行う場合と行わない場合のそれぞれの結果と,正確な方法である二項検定の結果を比較してどのようなことがいえるか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
マクネマー検定の拡張
● その1(SPSS で採用されている)
対応のある二変数が順序尺度以上で,それぞれが 3 種類以上の値(カテゴリー)を持っていてもよい。このような場合には以下のようにして,拡張されたマクネマー検定が定義できる。
● その2(R で採用されている)
セルの対称性という観点からもう一つ別の拡張がある。対称性の適合度検定(goodness of fit test of symmetry)とも呼ばれる。この方法は,変数が名義尺度であっても適用できる。
応用問題:
「ある意見への賛否の態度を 2 回調査した結果は表 3 のようになった。 変化があったといえるかどうか検定しなさい。SPSS と R による拡張をそれぞれ試し,比較しなさい。」
4 月 | |||||
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支持する | どちらともいえない | 支持しない | 合計 | ||
1 月 | 支持する | 13 | 6 | 1 | 20 |
どちらともいえない | 2 | 8 | 19 | 29 | |
支持しない | 4 | 7 | 21 | 32 | |
合計 | 19 | 21 | 41 | 78 |