母比率の検定 Last modified: Dec 26, 2008
例題:
「母不良率が 3% であるはずの生産工程から,製品 20 個を取り出したとき,不良品が 2 個あった。母不良率が 3% から変化しているかどうか検定しなさい。」
検定手順:
- 記号の定義
ケース数を $n$,そのうちで対象とする属性を持つもの(陽性数と呼ぶことにする)の数を $r$ とする。標本比率を $p = r\ /\ n$,母比率を $\pi$,母比率の特定の値を $\pi_{0}$ とする。
例題では,$n = 20$,$r = 2$,$p = 2\ /\ 20 = 0.1$,$\pi_{0} = 0.03$ である。
- 前提
- 帰無仮説 $H_0$: 「母比率はある値である $\pi = \pi_{0}$」。
- 対立仮説 $H_1$: 「母比率はある値と異なる $\pi \ne \pi_{0}$」。
- 有意水準 $\alpha$ で両側検定を行う(片側検定も定義できる)。
- 正規分布に近似する方法 ・・・・・・・・ $\min [ n \ \pi_{0} ,\ n \ ( 1 - \pi_{0} ) ] \geqq 5$ の場合
例題の場合,$n \ \pi_{0} = 20 \times 0.03 = 0.6$ なので,正規分布に近似する方法は使用できない。
以下では,もしこの方法に依った場合どうなるかを示す。
- 以下の式で,検定統計量 $Z_{0}$ を計算する。$Z_{0}$ は,正規分布に従う。
\[
Z_0 = \frac{|\ p-\pi_0\ |}{\sqrt{\pi_0\ (1-\pi_0)\ /\ n}}
\]
例題の場合,$Z_{0} ≒ 1.835$ になる。
- 有意確率を $P = \Pr\{|\,Z\,|\geqq Z_{0}\}$ とする(片側検定の場合には片側確率を求めること)。
正規分布表,または正規分布の上側確率の計算を参照すること。
例題の場合,$\Pr\{|\,Z\,|\geqq 1.96\}= 0.05$ なので,$P = \Pr\{|\,Z\,| \geqq 1.835\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.06649$)。
- 帰無仮説の採否を決める。
- $P \gt \alpha$ のとき,帰無仮説は棄却できない(片側検定のときは $P\ /\ 2$ と $\alpha$ を比較する)。「母比率は $\pi_{0}$ と異なるとはいえない」。
- $P \leqq \alpha$ のとき,帰無仮説を棄却する。「母比率は $\pi_{0}$ と異なる」。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「母不良率が $3\%$ から変化しているとはいえない」。
R で計算してみる
- $F$ 分布による方法(二項検定と等価)
- 検定統計量を計算する。
- $p \gt \pi_{0}$ のとき
$\nu_{1} = 2\ ( n - r + 1 )$,$\nu_{2} = 2\ r$ としたとき,
次式の $F_0$ が,自由度 $(\nu_{1}, \nu_{2})$ の $F$ 分布に従うことを利用する。
\[
F_0 = \frac{\nu_2\ (1-\pi_0)}{\nu_1\ \pi_0}
\]
例題はこの場合に該当し,$\nu_{1} = 38$,$\nu_{2} = 4$ なので,$F_0 ≒ 3.4035$ となる。
- $p \lt \pi_{0}$ のとき
$\nu_{1} = 2\ ( r + 1 )$,$\nu_{2} = 2\ ( n - r )$ としたとき,
次式の $F_0$ が,自由度 $(\nu_{1}, \nu_{2})$ の $F$ 分布に従うことを利用する。
\[
F_0 = \frac{\nu_2\ \pi_0}{\nu_1\ (1-\pi_0)}
\]
- 自由度が $(\nu_{1}, \nu_{2})$ の $F$ 分布において,有意確率を $P = 2 \times \Pr\{F \geqq F_0 \}$ とする。(注意)
$F$ 分布表($\alpha = 0.05$,$\alpha = 0.025$,$\alpha = 0.01$,$\alpha = 0.005$),または $F$ 分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,$P = 0.2397$ である。
- 帰無仮説の採否を決める。
- $P \gt \alpha$ のとき,帰無仮説は棄却できない(片側検定のときは $P\ /\ 2$ と $\alpha$ を比較する)。「母比率は $\pi_{0}$ と異なるとはいえない」。
- $P \leqq \alpha$ のとき,帰無仮説を棄却する。「母比率は $\pi_{0}$ と異なる」。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「母不良率が $3\%$ から変化しているとはいえない」。
演習問題:
「内閣の支持率を 500 人の有権者に調査したところ 35% であった。数カ月前のもっと大規模な調査では 40% であった。支持率が下降したといえるか検定しなさい。」
問題1 帰無仮説はどれか。a,b,c,d のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題2 対立仮説はどれか。a,b,c,d のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題3 片側検定を行うべきか両側検定を行うべきか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題4 母比率はいくつか,解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題5 正規分布に近似する方法で検定を行えるか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題6 検定統計量を求めなさい。答えは小数点以下 5 桁目で四捨五入した値を解答欄に記入し,解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題7 有意確率は 0.05 より大きいか小さいか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題8 有意水準 $5\%$ で検定を行うとき,帰無仮説は棄却できるかできないか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題9 最終的な結論はどうなるか。a,b,c,d のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
応用問題:
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