コクランの $Q$ 検定 Last modified: Nov 07, 2002
対応のある $k$ 個($k \geqq 3$)の名義尺度変数において,処理間の差(比率の差)の検定を行う(2 つの対応のある比率の検定(マクネマー検定)を拡張した検定である)。各データは 2 値型の変数でなければならない。
例題:
「10 人の被検者を対象として,3 種類の状況の下である作業に成功するかどうかを調べたところ,表 1 のような結果であった(成功の場合 1,失敗の場合 0 で表した)。状況により成功の比率が違うかどうかを検定しなさい。」
表 1.コクランの $Q$ 検定を適用するデータ
| 被検者 | 状況 1 | 状況 2 | 状況 3 |
| 1 | 0 | 0 | 0 |
| 2 | 0 | 0 | 0 |
| 3 | 0 | 0 | 0 |
| 4 | 0 | 0 | 1 |
| 5 | 0 | 1 | 1 |
| 6 | 0 | 1 | 1 |
| 7 | 0 | 1 | 1 |
| 8 | 1 | 1 | 1 |
| 9 | 1 | 1 | 1 |
| 10 | 1 | 1 | 1 |
検定手順:
- 前提
- 帰無仮説 $H_0$:「比率に差はない」。
- 対立仮説 $H_1$:「比率に差がある」。
- 有意水準 $\alpha$ で両側検定を行う(片側検定は定義できない)。
- $k$ 個の対応のあるデータが $n$ 組あり,表 2 のように整理されているとする。$R_{ij}$ は,特性を持つときに $1$,持たないときに $0$ の値をとるように記述されているとする。
表 2.$k$ 個の対応のあるデータ
| 組 | 処理 1 | 処理 2 | $\dots$ | 処理 $k$ | 合計 |
| 1 | $R_{11}$ | $R_{12}$ | $\dots$ | $R_{1k}$ | $L_{1}$ |
| 2 | $R_{21}$ | $R_{22}$ | $\dots$ | $R_{2k}$ | $L_{2}$ |
| $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ | $\vdots$ |
| n | $R_{n1}$ | $R_{n2}$ | $\dots$ | $R_{nk}$ | $L_{n}$ |
| 合計 | $G_{1}$ | $G_{2}$ | $\dots$ | $G_{k}$ |
\[
\begin{align*}
G_j &= \sum_{i=1}^n R_{ij}, \ \ \ \ \ j=1, 2, \dots, k \\
L_i &= \sum_{j=1}^k R_{ij}, \ \ \ \ \ i=1, 2, \dots, n
\end{align*}
\]
- 表 2 より,検定統計量 $Q$ を計算する。
\[
Q = \frac{\displaystyle k\ (k-1)\sum_{j=1}^k\ (G_j-\bar{G})^2} {\displaystyle k\sum_{i=1}^n L_i - \sum_{i=1}^n L_i^2}
= \frac{\displaystyle (k-1)\ \left [\ k\ \sum_{j=1}^k\ G_j^2 - \left( \sum_{j=1}^k G_{j} \right)^2\ \right ]} {\displaystyle k\sum_{i=1}^n L_i - \sum_{i=1}^n L_i^2}
\]
例題では,$Q = 6.5$ である。
- $Q$ は,自由度が $k-1$ の $\chi^2$分布に従う。
例題では,自由度が $2$ の $\chi^2$ 分布に従う。
- 有意確率を $P = \Pr \{ \chi^2 \geqq Q \}$ とする。
$\chi^2$ 分布表,または $\chi^2$ 分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,自由度 $2$ の $\chi^2$ 分布において,$\Pr\{\chi^2 \geqq 5.99\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{\chi^2 \geqq 6.5\}\lt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.03877$)。
- 帰無仮説の採否を決める。
- $P \gt \alpha$ のとき,帰無仮説は棄却できない。「比率に差はない」。
- $P \leqq \alpha$ のとき,帰無仮説を棄却する。「比率に差がある」。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \lt \alpha$ であるから,帰無仮説を棄却する。すなわち,「条件により成功の比率は異なる」といえる。
R で計算してみる
演習問題:
応用問題:
計算プログラム [R] [Python]
直前のページへ戻る
E-mail to Shigenobu AOKI