対応のある 2 変数の組について,母代表値に差があるか検定する。
2 変数の組で単に,いずれが優れているか劣っているかあるいは同等であるかしかわからないときに適用する(どの程度優れているか劣っているかが量的に定義できるときはウィルコクソンの符号付順位和検定を用いる)。
例題:
「10 人の被検者について,五段階評価をした。同じ被検者に対して,1 年後にもう一度評価した。その結果を表 1 に示す。1 年間で母代表値に差があったかどうか検定しなさい。」
被験者 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$X_{i}$ | A | A | C | B | D | A | C | B | D | B |
$Y_{i}$ | C | A | E | D | B | B | D | A | E | D |
$X_{i} - Y_{i}$ | $+$ | 0 | $+$ | $+$ | $-$ | $+$ | $+$ | $-$ | $+$ | $+$ |
検定手順:
例題では,$X_{i} \gt Y_{i}$ は $7$ 組,$X_{i} \lt Y_{i}$ は $2$ 組なので,$n_p = 7$,$n_m = 2$ である。
例題では,$N = 9$,$m = 2$ である。
\[ P = 2 \sum_{i=0}^m {}_N C_i\ \left ( \frac{1}{2} \right )^N \] 例題では,$\displaystyle P = \frac{2\ ( {}_{9}C_{0} + {}_{9}C_{1} + {}_{9}C_{2} )}{2^{9}} = 0.1796875$ となる。
\[ Z_0 = \frac{\left | n_p - n_m \right |}{\sqrt{n_p + n_m}} \] 連続性の補正は, \[ Z_0 = \frac{\left | n_p - n_m \right |-1}{\sqrt{n_p + n_m}} \] ただし, $\left | n_p - n_m \right | = 0$ のときは $Z_{0} = 0$ とする。
例題では,連続性の補正を行った場合,$Z_{0} = 1.33333$ となる。
例題では,$N$ が小さいので正規分布で近似するのは無理があるが,連続性の補正を行った場合,$\Pr\{|Z|\geqq 1.96\}= 0.05$ なので,$P = \Pr\{|Z| \geqq 1.33333\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.1824235$)。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「母代表値に差があるとはいえない」。
演習問題:
応用問題: