例題:
「12 匹のラットに 3 種類の餌を与えたときの肝臓の重量は表 1 のようであった。餌の種類により肝臓の重量の平均値に差があるといえいるか,有意水準 5% で検定しなさい。」
A餌 | 3.42 | 3.84 | 3.96 | 3.76 | |
---|---|---|---|---|---|
B餌 | 3.17 | 3.63 | 3.47 | 3.44 | 3.39 |
C餌 | 3.64 | 3.72 | 3.91 |
検定手順:
例題では次の表のようになる。
A餌 | 3 | 10 | 12 | 9 | |
---|---|---|---|---|---|
B餌 | 1 | 6 | 5 | 4 | 2 |
C餌 | 7 | 8 | 11 |
例題では,$R_1 = 34$,$R_2 = 18$,$R_3 = 26$ である。
\[
S_x = \frac{12 \displaystyle \sum_{j=1}^k \frac{R_j^2}{n_j}}{n(n+1)}-3(n+1)
\]
注:同順位が多い場合には,検定統計量 $S_x$ の修正が必要である。
$m$ 種類の同順位があったとき,それぞれの同順位の個数を $t_j\ ( j = 1, 2, \dots , m )$とする。例えば,順位が 5 となるものが 4 個,順位が 11 となるものが 5 個あった場合には,$m = 2$,$t_1 = 4$,$t_2 = 5$。
\[ C = 1-\frac{\displaystyle \sum_{j=1}^m \left (t_j^3-t_j\right )}{n(n^2-1)} \] \[ S_0 = \frac{S_x}{C} \] 例題では,$\displaystyle S_x = \frac{12 \left (\displaystyle \frac{34^2}{4} + \frac{18^2}{5} + \frac{26^2}{3} \right )} {12 \ ( 12 + 1 ) } - 3 \ ( 12 + 1 ) = 5.54872$ となる(同順位はないので補正は必要ない。)。
例題では,$S_x$ は,自由度 $2$ の $\chi^2$ 分布に従う。
例題では,自由度 $2$ の $\chi^2$ 分布において,$\Pr\{\chi^2 \geqq 5.99\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{\chi^2 \geqq 5.54872\} > 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.06239$)。
注:群の数が $3$ または $4$ で全ケース数が少ない場合には,統計数値表($k = 3$ のとき,$k = 4$ のとき)を参照すれば正確な検定結果が得られる。
$S_0$ が,表から得られる棄却限界値より大きいときに帰無仮説を棄却する。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P > \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「母代表値に差があるとはいえない」。
統計数値表からは,棄却限界値 $5.6564$ が得られるので,$S_x = 5.54872 < 5.6564$ ゆえ,同じ結果となる。
対比較の手順:
全体の代表値の差の検定が有意なときには,シェッフェの方法による対比較を行える。
例題の場合,$\displaystyle \frac{12 + 1}{2} = 6.5$ である。
例題の場合,それぞれ,$8.5$,$3.6$,$8.666667$ である。
\[ S_{ij} = \frac{\left (\bar{R}_i-\bar{R}_j \right )^2}{V\ \displaystyle \left(\frac{1}{n_i}+\frac{1}{n_j} \right )} \] 例題において,1 群と 2 群の比較は,$S_{12} = \displaystyle \frac{( 8.5 - 3.6 )^2} {13 \ \left( \displaystyle \frac{1}{4} + \frac{1}{5} \right) } = 4.104274$
例題の場合は $P_{12} > \alpha$ ゆえ,帰無仮説は棄却できない。「$1$ 群と $2$ 群の母代表値に差があるとはいえない」。
全ての群の組合せについて対比較を行ったときでも,検定全体の危険率が $\alpha$ 以下であることが保証される。
演習問題:
「4 つの群についてある測定をおこなったところ,表 3 のような結果が得られた。代表値に差があるか有意水準 5% で検定しなさい。また,多重比較を行いなさい。」
群 1 | 13 | 10 | 12 | 19 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
群 2 | 21 | 26 | 15 | 14 | 21 | |
群 3 | 27 | 28 | 21 | |||
群 4 | 13 | 16 | 19 | 10 | 12 | 19 |
問題1 帰無仮説はどれか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題2 検定統計量 $S_0$ を求めなさい。答えは小数点以下 4 桁目で四捨五入した値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題3 求められた $S_0$ 検定統計量は,自由度いくつの $\chi^2$ 分布に従うか,答えを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題4 有意確率は 0.05 より大きいか小さいか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題5 有意水準 5% で検定を行うとき,帰無仮説は棄却できるかできないか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題6 最終的な結論はどうなるか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題7 第 1 群と第 2 群の代表値の比較をするときの $S_{12}$ 検定統計量を求めなさい。答えは小数点以下 4 桁目で四捨五入した値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
問題8 第 1 群と第 2 群の代表値に差はあるといえるだろうか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。
応用問題: