二元配置分散分析
 各水準の繰返し数が等しく,1 である場合
     Last modified: Nov 07, 2002

例題

 「表 1 のようなデータがある。4 種の肥料間で収量に差があるか,また,3 種の品種ごとに差があるか検定しなさい。」

表 1.各水準の繰返し数が等しく,1 である場合
肥料
  品種     $B_{1}$     $B_{2}$     $B_{3}$     $B_{4}$  
$A_{1}$ 9  17  12  16 
$A_{2}$ 1  21  16  11 
$A_{3}$ 7  19  6  9 


検定手順:
  1. 前提

  2. 各セルの測定値を $X_{ij}\ ( i = 1, 2, \dots , a\ ;\ j = 1, 2, \dots , b )$ とする。

    例題では,$a = 3$,$b = 4$ である。

  3. 分析対象変数 $X$ の全変動 $SS_{t}$ は以下のように $3$ 個の独立な変動に分解できる。

    全変動 = 要因 A の効果 + 要因 B の効果 + 残差

    $SS_{t} = SS_{a} + SS_{b} + SS_{e}$

    $SS_{a}$ と $SS_{b}$ はそれぞれ要因 A,要因 B の主効果とよばれる。この場合には交互作用はない。これは,乱塊法に他ならない。

    \[ \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b (X_{ij} - \bar{X}_{\cdot \cdot})^2 = b\sum_{i=1}^a (\bar{X}_{i\cdot} - \bar{X}_{\cdot \cdot})^2 + a\sum_{j=1}^b (\bar{X}_{\cdot j} - \bar{X}_{\cdot \cdot})^2 + \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b (X_{ij} - \bar{X}_{i\cdot} - \bar{X}_{\cdot j} + \bar{X}_{\cdot \cdot})^2 \]

  4. 二元配置分散分析の結果は,表 2 のような分散分析表で表される。

    表 2.分散分析表 - 1
     変動要因   平方和  自由度 平均平方 F値
    要因 A $SS_{a}$ $df_{a}=a-1$  $MS_{a}=\displaystyle \frac{SS_{a}}{df_{a}}$   $F_{a}=\displaystyle \frac{MS_{a}}{MS_{e}}$ 
    要因 B $SS_{b}$ $df_{b}=b-1$ $MS_{b}=\displaystyle \frac{SS_{b}}{df_{b}}$ $F_{b}=\displaystyle \frac{MS_{b}}{MS_{e}}$
    残差 $SS_{e}$  $df_{e}=(a-1)\ (b-1)$  $MS_{e}=\displaystyle \frac{SS_{e}}{df_{e}}$
    全体 $SS_{t}$ $df_{t}=a\ b-1$

    例題では,表 3 のようになる。

    表 3.例題に対する分散分析表
     要因   平方和   自由度   平均平方  $F$ 値  有意確率 
    品種 21.50000 2 10.75000  0.6592845 0.55103
    肥料 268.6667 3 89.55556 5.492334 0.03719
    残差 97.83333 6 16.30556
    合計 388.0000 11 35.27273

  5. 要因 A の有意性の検定は,$F_{a}$ が第 $1$ 自由度が $df_{a}$,第 $2$ 自由度が $df_{e}$ である $F$ 分布に従うことを利用する。

  6. 要因 B の有意性の検定は,$F_{b}$ が第 $1$ 自由度が $df_{b}$,第 $2$ 自由度が $df_{e}$ である $F$ 分布に従うことを利用する。

  7. それぞれの自由度を持つ $F$ 分布において,有意確率を $P = \Pr\{F \geqq F_0\}$ とする。
    $F$ 分布表($\alpha = 0.05$$\alpha = 0.025$$\alpha = 0.01$$\alpha = 0.005$),または $F$ 分布の上側確率の計算を参照すること。

    例題では,品種の差については,自由度が $(2, 6)$ の $F$ 分布において,$\Pr\{F \geqq 5.14\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{F \geqq 0.659\}\gt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.551$)。
    肥料の差については,自由度が $(3, 6)$ の $F$ 分布において,$\Pr\{F \geqq 4.76\}= 0.05$ であるから,$P = \Pr\{F \geqq 5.492\}\lt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.037$)。

  8. 帰無仮説の採否を決める。

    例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),品種の差においては $P \gt \alpha$ であるから,帰無仮説は棄却できない。すなわち,「品種の差があるとはいえない」。肥料の差においては $P \lt \alpha$ であるから,帰無仮説を棄却する。すなわち,「肥料の差がある」。


演習問題

 「8 名のボランティアを被検者として,ある薬剤を投与しない場合(0mg),10,20,40,80mg 投与する場合の 5 通りの処置を行い,効果を測定した結果は表 4 のようになった。薬剤の効果があるかどうかを $5\%$ の有意水準で検定しなさい。」

表 4.薬剤投与量による効果

投与量
被検者 0mg 10mg 20mg 40mg 80mg
1 5 60 35 62 76
2 24 44 74 63 76
3 56 57 70 74 79
4 44 51 55 23 84
5 8 68 50 24 64
6 32 66 45 63 46
7 25 38 70 58 77
8 48 24 40 80 72

問題1 帰無仮説はどれか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:投与量により効果に差がある b:投与量により効果に差はない
解答欄:    

問題2 投与量の効果を検定するときの検定統計量 $F_0$ を求めなさい。答えは小数点以下 4 桁目で四捨五入した値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

解答欄:    

問題3 有意確率は $0.05$ より大きいか小さいか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:0.05 より大きい b:0.05 より小さい
解答欄:    

問題4 有意水準 $5\%$ で検定を行うとき,帰無仮説は棄却できるかできないか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:棄却できる b:棄却できない
解答欄:    

問題5 最終的な結論はどうなるか。a,b のいずれかを解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

選択肢 a:投与量により効果に差がある b:投与量により効果に差があるとはいえない
解答欄:    

応用問題


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