二群の比率の差の検定 Last modified: Apr 08, 2006
例題:
「内閣の支持率調査で,男の有権者の 300 人中 145 人,女の有権者 250 人中 157 人が支持していた。男女で支持率に差があるかどうか検定しなさい。」
注意:以下に述べるのは,正規分布を用いる近似的な検定方法である。「近似法」という意味は,「サンプルサイズが大きい場合には」という意味合いである。どの程度のサンプルサイズなら近似が成り立つのか心配ならば,サンプルサイズの大きさに関わりなくいつも正確な検定結果を与えるフィッシャーの正確検定を適用することを勧める。
検定手順:
- 記号の定義
第 $1$ 群のケース数を $n_1$,ある特性を持つものの数(陽性数と呼ぶことにする)を $r_{1}$,第 $2$ 群のケース数を $n_2$,陽性数を $r_{2}$ とする。
各群の比率を $p_{1} = r_{1}\ /\ n_1,p_{2} = r_{2}\ /\ n_2$ とする。
例題では,$n_1 = 300$,$r_{1} = 145$,$n_2 = 250$,$r_{2} = 157$ であるから,$p_{1} = 0.483$,$p_{2} = 0.628$ となる。
- 前提
- 帰無仮説 $H_0$: 「2 群の母比率に差はない」。
- 対立仮説 $H_1$: 「2 群の母比率に差がある」。
- 有意水準 $\alpha$ で両側検定を行う(片側検定も定義できる)。
- $2$ 群をプールした全標本中の陽性数の比率 $p$ を,$p = (r_{1}+r_{2})\ /\ (n_1+n_2)$ としたとき,検定統計量は次式で計算される。
\[
Z_0 = \frac{\left|\ p_1-p_2\ \right|} {\sqrt{p\ (1-p)\ \left( \displaystyle \frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right)}}
\]
なお,連続性の補正は次式で行われる。
\[
Z_0 = \frac{\left|\ p_1-p_2\ \right| - 0.5\ \left( \displaystyle \frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right)} {\sqrt{p\ (1-p)\ \left( \displaystyle \frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right)}}
\]
ただし,$\left|\ p_1-p_2\ \right| \leqq 0.5\ \left( \displaystyle \frac{1}{n_1}+\frac{1}{n_2}\right)$ のときは,$Z_{0} = 0$ とする。
例題では,$p = \displaystyle \frac{145+157}{300+250} = 0.549$ であり,$Z_{0} = 3.403$ となる(連続性の補正を行った場合は,$Z_{0} = 3.317$)。
- $Z_{0}$ は,正規分布に従う。有意確率を $P = \Pr\{|\,Z\,|\geqq Z_{0}\}$ とする。
正規分布表,または正規分布の上側確率の計算を参照すること。
例題では,$\Pr\{|\,Z\,|\geqq 1.96\}= 0.05$ なので,$P = \Pr\{Z \geqq 3.403\}\lt 0.05$ である(正確な有意確率:$P = 0.000666502$)。
- 帰無仮説の採否を決める。
- $P \gt \alpha$ のとき,帰無仮説は棄却できない。「母比率に差があるとはいえない」。
- $P \leqq \alpha$ のとき,帰無仮説を棄却する。「母比率に差がある」。
例題では,有意水準 $5\%$ で検定を行うとすれば($\alpha = 0.05$),$P \lt \alpha$ であるから,帰無仮説を棄却する。すなわち,「男女で支持率に差がある」と結論する。
R で計算してみる
演習問題:
応用問題:
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