線形比較によれば,平均値のあらゆる比較ができる。
線形比較とは,次式で表される $\theta$ である。
$\theta = c_{1} \mu_{1} + c_{2} \mu_{2} + \dots + c_{k} \mu_{k}$
ただし,$c_{1} + c_{2} + \dots + c_{k} = 0$
例えば,全体で $5$ 群あり,第 $1$,$2$,$3$ 群をこみにしたものと第 $4$,$5$ 群をこみにしたものの比較の場合には,
$c_{1} = c_{2} = c_{3} = 1 / 3$,$c_{4} = c_{5} = -1 / 2$ とする。得られる平均値の線形結合値の信頼区間を求め,
信頼区間に $0$ が含まれない場合には,プールした $2$ 群の平均値に差があるとする。
なお,対比較も,$c_{i} = 1,c_{j} = -1,c_{a} = 0\ (a \ne i,j)$のようにすれば可能であるが,検出力は対比較の方が高い。
事前にまとめる群が決まっている場合には $t$ 検定でもよいが,結果をみてから検定を行う場合には線形比較によらなければならない。
例題:
「5 種類の飼料で飼育した魚の体長の平均値が表 1 のようであった。平均値に差があるといえいるか,有意水準 $5\%$ で検定しなさい。また,多重比較を行いなさい。」
匹数 | 平均値 | 不偏分散 | |
---|---|---|---|
第 1 群 | 20 | 35.6 | 5.6 |
第 2 群 | 20 | 32.7 | 4.6 |
第 3 群 | 20 | 29.4 | 4.9 |
第 4 群 | 20 | 27.9 | 3.7 |
第 5 群 | 20 | 25.7 | 2.5 |
全体 | 100 | 30.26 | 16.53 |
検定手順:
$\hat{\theta} = c_{1} \bar{X}_{1} + c_{2} \bar{X}_{2} + \dots + c_{k} \bar{X}_{k}$
ただし,$c_{1} + c_{2} + \dots + c_{k} = 0$
ここで用いる $q$ は,検定に使用する有意水準に対応する“ステューデント化した範囲の表”($\alpha = 0.05$,$\alpha = 0.01$)での,群の数および $V_{w}$(群内分散)の自由度に対する値である。なお,対応する自由度が表にない場合には,もよりの $2$ 個の自由度に対する値から,自由度の逆数で比例配分して求める。$n$ は各群のサンプルサイズ $n_i$(i=1, 2, \dots, k)であるが,全て同数である。
\[ \hat{\theta} \pm q \sqrt{\frac{V_w}{n}} \]
全ての可能な線形比較の結果は,指定された有意水準のもとで正しい。
例題の解:
比較する群 | $\hat{\theta}$ | 信頼区間 | 判定 |
---|---|---|---|
(1,2,3):(4,5) | 5.766667 | [ 3.950224 ,7.583109 ] | 有意な差である |
(1,2):(4,5) | 7.350000 | [ 5.533557 ,9.166443 ] | 有意な差である |
(1):(4,5) | 8.800000 | [ 6.983557 ,10.61644 ] | 有意な差である |
(2,3):(4,5) | 4.250000 | [ 2.433557 ,6.066443 ] | 有意な差である |
演習問題:
応用問題: