ケース数 $n$ の標本を $k$ 個のカテゴリーに分割する場合,$k-1$ 個のカテゴリーには任意のケースを割り振れるが,残る 1 カテゴリーに割り振れるケース数は必然的に定まる。すなわち,各カテゴリーに該当するケース数の和が $n$ であるとういう制約条件が 1 個あるので,自由に割り振れるカテゴリー数は 1 つ減ることになる。このようなときに,自由度は $k-1$ であるという。また,$n$ 個の観察値は全体として自由度 $n$ を持つが,$\sum(X_i-\bar{X})^2$ は $\bar{X}=\displaystyle \frac{\sum X_i}{n}$ という制約条件が 1 つあるので,自由度は $n-1$ になる。不偏分散が $\displaystyle \frac{\sum(X_i-\bar{X})^2}{n-1}$ のように $n-1$ で割られるのもここに起因する。さらに拡張して考えると,$n$ 個の独立な正規確率変数に基づく統計量の分布,例えば $\chi^2=\sum X_i^2$ は自由度 $n$ の カイ二乗分布に従うという。また,ケース数が $n_1$,$n_2$ である 2 群の分散比は,それぞれの不偏分散が自由度 $n_1-1$,$n_2-1$ なので,2 つの自由度 $n_1-1$,$n_2-1$ を持つ $F$ 分布に従う。$k \times m$ 分割表においては周辺度数(縦横の合計欄の数値)が決っているので,$k \times m$ 個の桝目のうち自由に数値を書込むことのできるのは $(k-1)\times (m-1)$ 個だけである。この分割表から計算される検定統計量 $\chi^2=\sum\sum \displaystyle \frac{(O_{ij}-E_{ij})^2}{E_{ij}}$ は,自由度 $(k-1)\times(m-1)$ の カイ二乗分布に従う($O_{ij}$,$E_{ij}$ は桝目 $i$,$j$ の観察値と期待値)。平均値の検定に使用される $t$ 分布も,例えば母平均の検定においては $t_0=\displaystyle \frac{\bar{X}-\mu}{\sqrt{\sum(X_i-\bar{X})^2\ /\ (n-1)\ /\ n}}$ なので 自由度 $n-1$ を持つ(前述のとおり,$\sum (X_i-\bar{X})^2$ の自由度は $n-1$ である)。