複数の研究結果から effect size を統合する手法(1)     Last modified: May 16, 2002

 二群の平均値の差を検討するような研究では,平均値($M$),標準偏差($SD$),サンプルサイズ($N$) という情報も提供される。

  1. 個々の研究における effect size は,処理群の平均値($M_e$)と対照群の平均値($M_c$)の差を,標準偏差で割ったもので表される。これは,測定単位には無関係で,標準化された効果の大きさを表す。

    1. effect size g   Glass(1976)

      \[ g = \frac{M_e-M_c}{SD} \]  $SD$ は,対照群の標準偏差($SD_c$)でもよいが,多くの場合は

      \[ SD = \sqrt{\frac{(N_e-1)\ SD_e^2+(N_c-1)\ SD_c^2}{N_e+N_c-2}} \] が使われる。

    2. effect size $g$ は不偏推定量ではない。不偏推定量は以下の式で求められる。

      \[ d = \left \{ 1-\frac{3}{4\ (N_e+N_c)-9} \right \} \ g \]

  2. 全ての研究結果を統合した effect size は以下のようになる。

    1. $g$ あるいは $d$ の単純平均

    2. サンプルサイズで重み付けされた平均

      \[ d{+} = \frac{\displaystyle \sum_{i=1}^k \displaystyle \frac{d_i}{S_{est}^2(d_i)}} {\displaystyle \sum_{i=1}^k \displaystyle \frac{1}{S_{est}^2(d_i)}} \] ただし,$S_{est}^2(d_i)$ は個々の $d$ の分散で,

      \[ S_{est}^2(d_i) = \frac{N_e+N_c}{N_e\ N_c} + \frac{d^2}{2\ (N_e+N_c)} \]


 テストデータは,各研究で得られた,処理群と対照群の平均値,標準偏差,標本サイズ。 このデータは,前のページ(no01, no02)で使った P 値のデータの元になったものである。

   Me SDe Ne  Mc SDc Nc
1 130  15 10 140  20  5
2 120  12 40 140  15 20
3 140  20 30 150  25 30
4 160  20 40 145  35 20

 R で書いてみると以下のようになる。

# effect size の統合 平均値の差
{
Me <- c(130, 120, 140, 160) # 処理群
SDe <- c(15, 12, 20, 20)
Ne <- c(10, 40, 30, 40)
Mc <- c(140, 140, 150, 145) # 対照群
SDc <- c(20, 15, 25, 35)
Nc <- c(5, 20, 30, 20) 
SD <- sqrt(((Ne-1)*SDe^2 + (Nc-1)*SDc^2) / (Ne+Nc-2))
g <- (Me-Mc)/SD
d <- (1-3/(4*(Ne+Nc)-9))*g
S2est <- (Ne+Nc)/(Ne*Nc)+d^2/(2*(Ne+Nc))
print(data.frame(Me, SDe, Ne, Mc, SDc, Nc, g, d))
cat("\naverage of effect sizes\n")
cat("g  =", mean(g), "\n")
cat("d  =", mean(d), "\n")
cat("d+ =", sum(d/S2est) / sum(1/S2est), "\n")
}


得られる結果は,

   Me SDe Ne  Mc SDc Nc          g          d
1 130  15 10 140  20  5 -0.5988495 -0.5636230
2 120  12 40 140  15 20 -1.5315243 -1.5116344
3 140  20 30 150  25 30 -0.4417261 -0.4359894
4 160  20 40 145  35 20  0.5793887  0.5718642

average of effect sizes
g  = -0.4981778 
d  = -0.4848456 
d+ = -0.4089653 
 meta-analysis により,「処理群は対照群に比べて,標準偏差のほぼ半分に相当するだけ平均値が低い」ということがわかる。単に,P 値を統合した結果(no01, no02)よりは有用な情報を引き出している。


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