No.04701 Wilcoxonの符号付順位和検定の差=0の扱い  【ちぃ】 2007/11/14(Wed) 01:32

初めて書き込みをします,統計初心者の大学生です。

健常犬6頭に対しある治療を行った場合に大きな副作用がないことを示すため,
血液検査データの変動に有意差があるかどうかを検定したいと考えています。
治療前,治療直後,治療から1週間後の3スポットにおけるデータについて
それぞれの間
(治療前−治療後間,治療前−1週間後間,治療後−1週間後間の3パターン)
に差があるかどうかを検定することにしました。
(治療前−1週間後間は差が出ないことが理想です。)

統計学の教科書「バイオサイエンスの統計学」(南江堂)に習い,
n数が少ない上正規分布とは言いがたいデータばかりであること
最低n=6あれば検定可能であること
から,ノンパラメトリック法のWilcoxonの符号付順位和検定を用いるのが良いと判断しました。
教科書のやり方に習い,統計ソフトは使用せず手作業で検定を行っていたところ,

治療前−治療後 → 差
0.5 − 0.5  → 0
0.6 − 0.5 → 0.1
0.8 − 0.5 → 0.3
0.8 − 0.6 → 0.2
0.8 − 0.6 → 0.2
0.6 − 0.6 → 0

というデータが出てきました。
教科書によると,差がゼロになるデータは省くようなのですが,
そうするとn=4になるのでWilcoxonの符号付順位和検定はできない,ということになります。
もし仮に差=ゼロも順位に入れてしまう(順位ゼロ)と,2群間には有意差が出ます。
(n=6の場合,T=0だとp<0.05なのだそうで・・・)

このような場合,「検定不可」とするのがよいのでしょうか,差=ゼロも含め有意差ありとするのがよいのでしょうか。
もしかすると他に良い方法があるのでしょうか。
そもそも,ゼロは省かなければならないものなのでしょうか,それとも省いてもよいから省くものなのでしょうか。

もしご存知でしたらご教授いただければ幸いです。
検定法の選択自体が誤りでしたらご指摘をお願いいたします。

No.04702 Re: Wilcoxonの符号付順位和検定の差=0の扱い  【青木繁伸】 2007/11/14(Wed) 06:21

まず,「治療前−治療後間,治療前−1週間後間,治療後−1週間後間の3パターンに差があるかどうかを検定することにしました。」ということについては,検定の多重性について考慮してくださいということを挙げておきます。

さて,Wilcoxonの符号付順位和検定に差が0のものを含めることができるか問うことですが,「定義により」できません。順位0などというのは存在しません。
検定方式について,再確認しましょう。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Average/mpsr-test.html

なお,4対の場合に検定できないのではなく,そのような場合には「5%で有意となることがない」だけです。P値は出ます(しかも正確なP値が)。
以 下に R の結果を示します。この結果は差が0のものは含めても R が自動的に排除して適正な結果を計算していることを示すものでもあります。なお,データを10倍して整数にしているのは,コンピュータでの計算に誤差が入 らないようにしているためです(今回のデータに必要というわけではないのですが)
> library(exactRankTests)
> wilcox.exact(c(5,6,8,8,8,6), c(5,5,5,6,6,6), paired=TRUE)

Exact Wilcoxon signed rank test

data: c(5, 6, 8, 8, 8, 6) and c(5, 5, 5, 6, 6, 6)
V = 10, p-value = 0.125
alternative hypothesis: true mu is not equal to 0

> wilcox.exact(c(6,8,8,8), c(5,5,6,6), paired=TRUE)

Exact Wilcoxon signed rank test

data: c(6, 8, 8, 8) and c(5, 5, 6, 6)
V = 10, p-value = 0.125 # 差が0の対を含んでいるときと同じP値である
alternative hypothesis: true mu is not equal to 0

No.04703 Re: Wilcoxonの符号付順位和検定の差=0の扱い  【ちぃ】 2007/11/14(Wed) 14:01

青木先生

ご返答ありがとうございました。
先生のHPを読みながらいろいろ考えてみたところ, Wilcoxonの符号付順位和検定自体が何をしたいのか,数字にどういう意味があるのかが分かったので先生のおっしゃる内容が理解できました!
意味がわかると統計は面白いですね。
本当にありがとうございました!

ただ,本当に無知で申し訳ないのですが1点教えてください。

>まず,「治療前−治療後間,治療前−1週間後間,治療後−1週間後間の3パターンに差があるかどうかを検定することにしました。」ということについては,検定の多重性について考慮してくださいということを挙げておきます。

の,「検定の多重性を考慮する」ということがどういうことなのかがピンときません。
関連多群としてFriedman検定を行うのはどうかということでしょうか?
勘違いしていたら申し訳ございませんが,少し具体的にお話いただけませんでしょうか。

貴重なお時間をいただいてしまい申し訳ございませんが,よろしくお願いいたします。

No.04704 Re: Wilcoxonの符号付順位和検定の差=0の扱い  【青木繁伸】 2007/11/14(Wed) 17:04

あるデータを解析するために検定をk回行うとすると,1回の検定では危険率はαですが,k回の検定結果を総合した結論の危険率は 1-(1-α)^k になります。

「治療前−治療後間,治療前−1週間後間,治療後−1週間後間の3パターンに差があるかどうかを検定することにしました。」
ということですから,検定は3回行うことになります。
そして,α=0.05,k=3 のときは,0.142625 になってしまうのです。

「多重比較」というキーワードで検索するとよいと思います。

No.04705 Re: Wilcoxonの符号付順位和検定の差=0の扱い  【ちぃ】 2007/11/15(Thu) 11:57

青木先生

ありがとうございました。
ネット検索で調べてみたところ,多重比較の検定の適応に入るように思えます。
勉強してやってみようと思います。
また,分からなくなりましたらこちらにお邪魔するかもしれませんが,そのときはよろしくお願いいたしますm(_ _)m

大変勉強になりました。ありがとうございました!

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