No.00308 被験者数が少ない時の分析  【ひろ】 2006/06/12(Mon) 17:34

以前も質問をした者ですが,もう一度ご指導をお願いします。

7名の患者さんを対象に,プログラムを実施し,その効果を,(1)プログラム実施前,(2)プログラム終了直後,(3)プログラム終了半年後,(4)プログラム終了1年後の4回,同じ指標を用いて評価しました。プログラムの効果がどの時点で現れてくるのか,またそれは持続するのかを検討するための分析を行いたいと思います。

前回ご助言いただいたことと,「SPSSによる分散分析と多重比較の手順(石井先生)」とを参考に,フリードマン検定→ウィルコクソン符号和検定を繰り返しボンフェローニの不等式による修正 を行ったのですが,この方法だと有意の基準が厳しく(有意確率0.05÷3),単純なウィルコクソンの結果は有意な結果(p<.05)が沢山あるにも関わらず,全て否定されてしまいました。

研究した実感としても効果が出ているのに,統計で全て棄却されるのは残念に思い,もう一度質問させていただきます。

質問
(1)7名しかいないので,正規分布は無理だと思ったのですが,試しにヒストグラムを作ってみたところ,正規分布の形をしている指標が半分位ありました。その程度では,パラメトリックな検定は使ってはいけないでしょうか??
(2)パラメトリックの検定を用いる場合,「反復測定による一元配置の分散分析」を用いる→多重比較として「Dunnett(E)」を使用する ということで良いのでしょうか?
(3)ノンパラを用いなければならない場合,有意な結果が出やすい別の分析方法は無いでしょうか?

No.00309 Re: 被験者数が少ない時の分析  【青木繁伸】 06/06/12(Mon) 17:46

標本が正規分布しているかどうかではなく,母集団が正規分布に従うかどうかが重要なんです。7例だと,たまたま正規分布みたいな(それにしてもどんな,2例,3例,2例 みたいな分布?)分布になることは良くあることでしょう。
等分散性についても同じ。母分散が等しいということが必要。

有意差の出る検定をあれこれ捜すのは,邪道です。

検定をやる前に,データを集める前に決めて置かねばならないことです。

有意になるように検定法を捜すということと,
有意にならないように検定法を捜すことは,同じですよね。

立場によって,望ましい結論が出るような方法を捜すあるいは結論を曲げることは,科学的に正しいことではありません。

No.00312 Re: 被験者数が少ない時の分析  【ひろ】 06/06/13(Tue) 10:06

青木様
コメントありがとうございます。「有意差の出る検定をあれこれ捜すのは邪道です」と いうのは仰るとおりです。私が選択している方法が本当に適切なのかという不安もあり質問させていただきました。唯一見つかった,対応のあるデータ・ノンパ ラの多重比較の「ボンフェローニの不等式による修正」は,あまりに厳しくて,本当にこれで「このプログラムは効果がない」と断定していいのか,逆の意味で も不安になりました。

もう一度質問させてください。基本的なことで申し訳ありません。私は,パラメトリックでは「標本が正規分布」してい ることが必要なのかと思っていました。ちなみに,今回は,体重と標準化されている心理指標を用いた調査なのですが,この場合は何の条件が満たされれば「母 集団は正規分布・等分散」とみなせる(パラメトリックの分析が使える)ものなのでしょうか。

No.00346 Re: 被験者数が少ない時の分析  【後医は名医】 06/06/14(Wed) 23:45

>「反復測定による一元配置の分散分析」を用いる→多重比較として「Dunnett(E)」を使用する ということで良いのでしょうか?
Dunnett は独立した群の検定ですので反復測定には使えません。パラメトリックを使用するにもpaired-t検定を繰り返してボンフェローニの補正となります。心 理学分野の方とおみうけしました。「生理心理学と精神生理学 22(3):275-290, 2004」に心理学の多重検定についての説明があります。

>「ボンフェローニの不等式による修正」は,あまりに厳しくて,本当にこれで「このプログラムは効果がない」と断定していいのか,逆の意味でも不安になりました。
定 番の「統計的多重比較法の基礎」p27では多重比較法はa(アルファ)エラーを有意水準以下にするために代償としてB(ベータ)エラーが増大します。です からひろ様の直感はあたっているかもしれません。多重比較では帰無仮説を「採択」するのではなく,「保留」するのです。多重検定についてはジレンマがあり ます。以下の過去ログを参照して下さい。特に140のログには我々のかかえている悩みがあります。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/mb-arc/arc002/132.html

No.00352 Re: 被験者数が少ない時の分析  【ひろ】 06/06/15(Thu) 15:37

後医は名医様,お返事ありがとうございます。周囲に統計に詳しい人が居ない中,このような掲示板があることや,質問に答えてくださる方がいらっしゃること,非常にありがたく思っています。

Dunnettは,パラメトリックでも使用できないのですね。「SPSSによる分散分析と多重比較の手順(石井貞夫先生)」では反復測定による一元配置の分散分析の後に使用できることになっているのですが,他の情報と矛盾していたので,質問させていただきました。
また,Friedman検定の後,ウィルコクソンを行い,ボンフェローニの補正を行わないまま,P<.05で有意差ありとした研究論文があったりと,どれが正しいのか混乱してしまいました。

過去ログ,見ました。教えていただいた文献と本も早速取り寄せる手続きを取りましたので,参考にさせていただきます。

改めて,ここ数日,本やネットで調べていて少し進展したので,初歩的なことで申し訳ありませんが,質問させてください。
質問
(1)SPSS で正規性の検定(Kolomogorov-Smirnov)ができることがわかりました。多くの尺度で正規性が認められたのですが,7名だけのデータで あってもこの検定で正規性が認められたら,パラメトリック検定を行ってよいものなのでしょうか(少数データだと,正規性の検定を使うこと自体に問題が無い のか?と疑問に思いました)。
(2)ノンパラ(フリードマンやウィルコクソン)検定を行った時には,論文に記載する図と表はどのように記述するのが正 しいのでしょうか?(過去の論文を調べたところ,平均値を用いて図表を載せているものもあったのですが,平均値を用いない検定なのに,平均値を載せるのは 矛盾している気がしました)。

No.00354 Re: 被験者数が少ない時の分析  【青木繁伸】 06/06/15(Thu) 16:08

(1) No. 309 については,若干不適切な回答になりました。標本データで正規性検定をするということは,母集団が正規分布に従っているということを検定することではあり ますが,標本サイズが7例と少ない場合には,ほとんど有意な結果にはならないということです。正規性の検定の場合,帰無仮説が「母分布は正規分布である」 で,対立仮説が「母分布は正規分布ではない」となり,普通の検定と違って(本当は違っていないのだが),検定を行う人は帰無仮説が採択される方を望むこと になります。で,標本サイズがちいさいほど帰無仮説は採択されやすくなる(標本サイズが大きくなれば,どんな小さな差も検出されて帰無仮説が棄却されやす くなるというのの裏返しです)。
7例だと,一様分布で測定値が 1,2,3,4,5,6,7 のような場合でも,正規分布でないとはいえないでしょう。

(2) ノンパラメトリックで押し通すべきでしょうね。すなわち,中央値と四分偏差など,図に描くならボックスプロット。

No.00404 Re: 被験者数が少ない時の分析  【ひろ】 06/06/20(Tue) 18:39

青木様
今回もご教示いただき,ありがとうございました。分析を進めて行きたいと思います。

後医は名医様
やっと教えていただいた文献(生理心理)が手に入りました。まさに,今の私に必要な文献です。全てはまだ理解できていませんが,じっくり理解したいと思います。ありがとうございました。

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