二元配置分散分析
 各水準の繰返し数が等しくないが,周辺度数に比例する場合

          Last modified: Nov 07, 2002


例題

 「表 1 のようなデータについて二元配置分散分析を行いなさい。」

表 1.各水準の繰返し数が等しくないが,
周辺度数に比例する場合
要因 B
 $b_{1}$   $b_{2}$   $b_{3}$   $b_{4}$   $b_{5}$ 
 要因 A   $a_{1}$  7.0 
5.7 
4.6 
5.6 
7.0 
7.4 
6.6 
7.3 
6.3 
7.8 
5.3 
4.7 
 $a_{2}$  5.8 
8.9 
10 
7.1 
6.5 
9.8 
5.0 
9.7 
6.4 
9.9 
7.8 
5.4 
 $a_{3}$  8.1 
6.1 
10.2 
6.9 
5.2 
5.7 
11.8 
6.1 
10.4 
5.6 
9.4 
5.9 
12.1 
5.7 
5.3 
9.7 
5.5 
10.2 
13.8 
7.0 
11.1 
4.2 
7.1 
5.0 


検定手順:
  1. 前提

  2. 分析対象変数 $X$ の全変動 $SS_{t}$ は,次式のように $4$ 個の独立な変動に分解できる。

    全変動 = 要因 A の効果 + 要因 B の効果 + 要因 A と要因 B の交互作用 + 残差

    $SS_{t} = SS_{a} + SS_{b} + SS_{ab} + SS_{e}$

    $SS_{a}$ と $SS_{b}$ はそれぞれ要因 A,要因 B の主効果とよばれる。

    \[ \begin{align*} \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b \sum_{k=1}^{n_{ij}} (X_{ijk} - \bar{X}_{\cdot \cdot \cdot})^2 &=\ \sum_{i=1}^a n_{i \cdot} (\bar{X}_{i\cdot \cdot} - \bar{X}_{\cdot \cdot \cdot})^2\\ &+\ \sum_{j=1}^b n_{\cdot j} (\bar{X}_{\cdot j \cdot} - \bar{X}_{\cdot \cdot \cdot})^2\\ &+\ \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b n_{ij} (\bar{X}_{i j \cdot} - \bar{X}_{i\cdot \cdot} - \bar{X}_{\cdot j \cdot} + \bar{X}_{\cdot \cdot \cdot})^2\\ &+ \sum_{i=1}^a \sum_{j=1}^b \sum_{k=1}^{n_{ij}} (X_{ijk} - \bar{X}_{i j \cdot})^2 \end{align*} \]

  3. この場合,二元配置分散分析は表 2 のような分散分析表で表される。

    表 2.分散分析表
    変動要因 平方和 自由度 平均平方
    要因 A $SS_{a}$ $df_{a} = a - 1$ $MS_{a} = \displaystyle \frac{SS_{a}}{df_{a}}$
    要因 B $SS_{b}$ $df_{b} = b - 1$ $MS_{b} = \displaystyle \frac{SS_{b}}{df_{b}}$
     交互作用   $SS_{ab}$   $df_{ab} = ( a - 1 )\ ( b - 1 )$   $MS_{ab} = \displaystyle \frac{SS_{ab}}{df_{ab}}$ 
    残差 $SS_{e}$ $df_{e} = n_{ \cdot \cdot }- a\ b$ $MS_{e} = \displaystyle \frac{SS_{e}}{df_{e}}$
    全体 $SS_{t}$ $df_{t} = n_{ \cdot \cdot } - 1$

    表 3.分散分析表 を解釈する 3 つのモデル
    $F$ 値
     変動要因   モデルI   モデルII   混合モデル 
    要因 A  $F_{a} =$  $\displaystyle \frac{MS_{a}}{MS_{e}}$ $\displaystyle \frac{MS_{a}}{MS_{ab}}$ $\displaystyle \frac{MS_{a}}{MS_{ab}}$
    要因 B  $F_{b} =$  $\displaystyle \frac{MS_{b}}{MS_{e}}$ $\displaystyle \frac{MS_{b}}{MS_{ab}}$ $\displaystyle \frac{MS_{b}}{MS_{e}}$
    交互作用  $F_{ab} =$  $\displaystyle \frac{MS_{ab}}{MS_{e}}$ $\displaystyle \frac{MS_{ab}}{MS_{e}}$ $\displaystyle \frac{MS_{ab}}{MS_{e}}$

    モデル I母数モデル とも呼ばれる。要因 A,B の各水準を固定された不動のものとみなす。

    モデル II変量モデル とも呼ばれる。要因 A,B の各水準は無数の水準の内の標本とみなし,そこから得られる推測結論を,標本以外の広い範囲へも適用しようとするものである。

    混合モデル は,片方の要因に母数モデル,もう一方の要因に変量モデルを考えるものである。

  4. それぞれの自由度を持つ $F$ 分布において,有意確率を $P = \Pr\{F \geqq F_0\}$ とする。
    $F$ 分布表($\alpha = 0.05$$\alpha = 0.025$$\alpha = 0.01$$\alpha = 0.005$),または $F$ 分布の上側確率の計算を参照すること。

  5. 帰無仮説の採否を決める。

    例題では,それぞれのモデルごとに以下のようになる。各表の右端の欄に帰無仮説を棄却できるかできないかを示す。

    n.s. は有意確率が $0.05$ 以上なので,帰無仮説は棄却できない。
    * は有意確率が $0.05$ 以下なので,帰無仮説を棄却する。
    ** は有意確率が $0.01$ 以下なので,帰無仮説を棄却する。

    表 4.モデル I( 母数モデル )
      要因    平方和   自由度   平均平方    $F$ 値    有意確率     
    要因 A 20.79688 2 10.39844 1.758991 0.18798 n.s.
    要因 B 19.53646 4 4.884115 0.8261929 0.51804 n.s.
    交互作用 7.848958 8 0.9811198 0.1659654 0.99400 n.s.
    残差 195.0825 33 5.911591
    合計 243.2648 47 5.175847

    表 5.モデル II( 変量モデル )
      要因    平方和   自由度   平均平方    $F$ 値    有意確率     
    要因 A 20.79688 2 10.39844 10.59854 0.00564 **
    要因 B 19.53646 4 4.884115 4.978102 0.02600 *
    交互作用 7.848958 8 0.9811198 0.1659654 0.99400 n.s.
    残差 195.0825 33 5.911591
    合計 243.2648 47 5.175847

    表 6.混合モデル
      要因    平方和   自由度   平均平方    $F$ 値    有意確率     
    要因 A 20.79688 2 10.39844 10.59854 0.00564 **
    要因 B 19.53646 4 4.884115 0.8261929 0.51804 n.s.
    交互作用 7.848958 8 0.9811198 0.1659654 0.99400 n.s.
    残差 195.0825 33 5.911591
    合計 243.2648 47 5.175847


演習問題


応用問題


・ 計算プログラム [R] [Python]
・ 直前のページへ戻る  ・ E-mail to Shigenobu AOKI