推定量の有効性を示す一つの指標としては 最小分散性 が挙げられる。
母集団分布が,母平均値 $\mu$,母分散 $\sigma^{2}$ の正規分布 $\mathcal{N}(\mu,\ \sigma^{2})$ のとき,ランダムに抽出された $n$ 個の確率標本 $X_{1}, X_{2}, \dots , X_{n}$ を考える。
標本平均 $\bar{X}$ は,不偏であり,しかも,最小分散 $V[\bar{X}]=\displaystyle \frac{\sigma^2}{n}$ を持つ。
ところが,同じ標本から計算される中央値 $M_e$ は不偏ではあるが,その分散は $V[M_e] = \displaystyle \frac{\pi\ \sigma^2}{2n}$ となるからから,$\displaystyle \frac{V[\bar{X}]}{V[M_e]} = \frac{2}{\pi} ≒0.637$ である。
このことは,大きさ 637 の標本から得られる平均値と同じ精度を持つ中央値を得るためには,大きさ 1000 の標本を使わなくてはならないことを意味する。この意味で,最小分散性は,推定量の有効性を示す一つの指標になっている。
なお,(1)式は クラメール-ラオの不等式 と呼ばれるもので,式において等号が成立する場合,推定量 $\hat{\theta}(X)$ は 有効推定量 と呼ばれる。
演習問題:
応用問題: