最小分散性     Last modified: May 16, 2002

 推定量の 有効性 を示す一つの指標として 最小分散性 が挙げられる。

 母平均値 $\mu$,母分散 $\sigma^{2}$ の正規分布 $\mathcal{N}(\mu, \sigma^{2})$ に従って分布する 2 つの独立な確率変数 $X$,$Y$ から母平均 $\mu$ を推定する場合, $a + b = 1\ (a \geqq 0, b \geqq 0 )$ であれば,$Z = a X + b Y$ は,$E[ Z ] = a E[ X ] + b E[ Y ] = ( a + b ) \mu$ なので不偏推定量になる。しかし,$a$(または $b$)の選び方によって,確率変数 $Z$ の作り方は無数にある。

 ところで,$Z$ の分散は

\[ V[Z] = a^{2} V[X]+ b^{2} V[Y] = ( a^{2} + b^{2} )\ \sigma^{2} \geqq 2 a b\ \sigma^{2} \] となるから,$a = b = \displaystyle \frac{1}{2}$ つまり $Z = \displaystyle \frac {X + Y }{ 2 }$ のとき $Z$ の分散は最小値 $\displaystyle \frac{\sigma^{2}}{2}$ をとる。

 このように,母数 $\theta$ の推定量 $\hat{\theta}$ のなかで,$\hat{\theta}$ の分散

\[ V[\hat{\theta}] = E\left [ (\hat{\theta}-\theta)^2 \right ] \] を最小にする推定量は,最小分散推定量 と呼ばれ,推定量が満たすべき望ましい基準とされている。

 なお,不偏でしかも最小分散性を満たす推定量は,最良線形不偏推定量 と呼ばれる。


演習問題


応用問題


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