母平均の検定・区間推定のとき     Last modified: Mar 25, 2004

 信頼率 $(1 - \alpha)$ のもとで,母平均 $\mu$ を $\pm d$ の精度で推定するために必要な標本の大きさ $n$ は,(1)式で見積もることができる。

\[ n \geqq \left ( \frac{Z_{\alpha/2}}{d} \right )^2\sigma^2 \tag{1} \] 例:

 類似の過去の調査結果から,母平均が 10,母分散が 3 程度であると考えられる。このとき,信頼率 $95\%$ で母平均を $\pm0.5$ の精度で推定するためにはどのくらいの標本が必要か。

答え:

 $\alpha = 0.05$ であるから,$Z_{\alpha / 2} = Z_{0.025} ≒ 1.96$ となる。

 したがって,$n ≒ \left (\displaystyle \frac{1.96}{0.5} \right )^{2} \times 3 = 46.0992$


 (1)式はいろいろな教科書に載っているものであるが,検出力を指定できないので,場合によっては不都合である。

 検出力を指定して必要な標本の大きさを求めるには,(2)式を使う。

 ちなみに,(1)式と(2)式を比較してみると,分子に $Z _{\beta}$ が含まれているかどうかの違いであり,上に示した式で得られるのは検出力が $50\%$ のときのものであることがわかる($Z_{\beta} = Z_{0.5} = 0$)。

 必要な標本の大きさ $n$ は,(1)式で見積もることができる。

\[ n \geqq \left ( \frac{Z_{\alpha/2}+Z_{\beta}}{d} \right )^2\sigma^2 \tag{2} \]  上の例題を,検出力 = 0.8 として解いてみよう。

 $1-\beta = 0.8$ すなわち,$\beta = 0.2$ であるから,$Z_{\beta} = Z_{0.2} ≒ 0.8416$ となる。したがって,

\[ n ≒ \left (\displaystyle \frac{ 1.96 + 0.8416}{ 0.5}\right )^{2} \times 3 = 94.18755 \]


・ 参考文献
  東京大学教養学部統計学教室編「基礎統計学III 自然科学の統計学」東京大学出版会
・ 計算プログラム [R] [Python]
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