信頼率 $(1 - \alpha)$ のもとで,母平均 $\mu$ を $\pm d$ の精度で推定するために必要な標本の大きさ $n$ は,(1)式で見積もることができる。
\[ n \geqq \left ( \frac{Z_{\alpha/2}}{d} \right )^2\sigma^2 \tag{1} \] 例:
類似の過去の調査結果から,母平均が 10,母分散が 3 程度であると考えられる。このとき,信頼率 $95\%$ で母平均を $\pm0.5$ の精度で推定するためにはどのくらいの標本が必要か。
答え:
$\alpha = 0.05$ であるから,$Z_{\alpha / 2} = Z_{0.025} ≒ 1.96$ となる。
したがって,$n ≒ \left (\displaystyle \frac{1.96}{0.5} \right )^{2} \times 3 = 46.0992$
(1)式はいろいろな教科書に載っているものであるが,検出力を指定できないので,場合によっては不都合である。
検出力を指定して必要な標本の大きさを求めるには,(2)式を使う。
ちなみに,(1)式と(2)式を比較してみると,分子に $Z _{\beta}$ が含まれているかどうかの違いであり,上に示した式で得られるのは検出力が $50\%$ のときのものであることがわかる($Z_{\beta} = Z_{0.5} = 0$)。
必要な標本の大きさ $n$ は,(1)式で見積もることができる。
\[ n \geqq \left ( \frac{Z_{\alpha/2}+Z_{\beta}}{d} \right )^2\sigma^2 \tag{2} \] 上の例題を,検出力 = 0.8 として解いてみよう。
$1-\beta = 0.8$ すなわち,$\beta = 0.2$ であるから,$Z_{\beta} = Z_{0.2} ≒ 0.8416$ となる。したがって,
\[ n ≒ \left (\displaystyle \frac{ 1.96 + 0.8416}{ 0.5}\right )^{2} \times 3 = 94.18755 \]