K 群の比率の差の検定・多重比較( 対比較 )
     ライアンの方法
     Last modified: Apr 15, 2004

 k × 2 分割表で全体としての比率の差がないときは,多重比較は行わない。


例題

 「表 1 のようなデータにおいて,5 群の陽性率の差を多重比較により検討しなさい。有意水準 5% とする。」

表 1.数値例
陽性 陰性 合計 陽性率
第 1 群 2 28 30 0.067
第 2 群 4 31 35 0.114
第 3 群 14 33 47 0.298
第 4 群 13 8 21 0.619
第 5 群 39 6 45 0.867


検定手順:

  1. ライアンの方法では,k × 2 分割表の比率の χ2 検定の結果,全体として差が認められる場合にのみ対比較が行われる。

    例題では,χ2 検定統計量が 72.5872(自由度 = 4)となる。有意確率は 0.001 未満であるから,全体として比率の差があるといえる。したがって,対比較によって,どの群間で差があるかを検討する。

  2. 前提

  3. ライアンの方法では,名義的有意水準( α’: nominal significant level )という概念が使われる。

    群が k 個あった場合,全ての 2 群の比率の差を検定するためには kC2 回の検定を行わなければならない。検定結果全体としての有意水準を α とするためには,個々の検定において有意水準を α / {}kC2 まで下げておけばよい。しかし,もし比率の最大値と最小値に有意な差が認められたときには,次の段階で k - 1 個の比率の差を検定するときには,有意水準をもう少し大きくしてもよいであろう。

    このように考えると,個々の検定に使用する有意水準として,以下の式で表される名義的有意水準を使用すればよい。

    equation

  4. 比率の差の検定は,以下のように行う。

    1. 比較する 2 個の比率を Pi,Pj としたとき,Pi ≧ Pp ≧ Pj を満たす群の平均比率 P は,対象となる群においてある属性を持つケース数の合計 Σ r と,対象となる群のケース数の合計 Σ n の比で定義される。

      equation

    2. Pi と Pj の差の標準誤差 SE を求める。

      equation

    3. 正規分布において上側確率が α’/ 2 となるパーセント点を Zα’/ 2 とする。

    4. SE と Zα’/ 2 の積を RD( required difference )とすると,

      • Pi - Pj < RD のとき,帰無仮説を採択する。「母比率に差があるとはいえない」。

      • Pi - Pj ≧ RD のとき,帰無仮説を棄却する。「母比率に差がある」。

    5. 注:以上の検定は,通常の 2 群の比率の差の検定と本質的に同じである。ライアンの方法では,平均比率の定義が異なっている。したがって,

      equation

      による,Z0 を用いて検定してもよい(有意確率とα’を比較する)。

  5. 対比較は,以下のように行われる。

    1. まず,比率が最大である群と,最小である群について検定を行う。このとき,m = k である。もし有意差なしならば,検定終了。結論は「個々の比率の対に差はない」とする。もし有意差ありならば,次へ進む。

      例題では,第 1 群の比率 P1 = 0.067 と 第 5 群の比率 P5 = 0.867 を比較する。

      P5 ≧ Pp ≧ P1 を満たすのは 1 〜 5 群 の全てであるから,Σ r = 72,Σ n = 178 より,平均比率は p = 72 / 178 = 0.4044944 である。これにより,SE = √(0.4044944・0.5955056・(1/45+1/30)) = 0.1156812 となる。

      名義的有意水準は α’= 2・0.05 / ( 5・4 ) = 0.005 であるから,Zα’/ 2 = 2.807034。RD = 0.1156812・2.807034 = 0.3247211 となる。

      第 1 群と第 5 群の比率の差 = 0.8 > RD = 0.3247211 なので「第 1 群と第 5 群の比率には差がある」と結論する。

    2. 次に,m = k - 1 となるような 2 個の比率の比較を行う。このような比率の組合せは 2 通りある。すなわち,最大の比率 vs. 2 番目に小さい比率,2 番目に大きい比率 vs. 最小の比率の検定を行うことになる。名義的有意水準は,前項( i )よりも大きくなる。

      例題では,第 2 群と第 5 群,第 1 群と第 4 群の比較を行う。名義的有意水準は α’= 2・0.05 / ( 5・3 ) = 0.006666667 であるから,Zα’/ 2 = 2.713052 。

      まず,第 2 群と第 5 群の比較を行う。P5 ≧ Pp ≧ P2 を満たすのは 2 〜 5 群 であるから,Σ r = 70,Σ n = 148 より,平均比率は p = 70 / 148 = 0.4729729 である。SE = √( 0.4729729・0.5270271・(1/45+1/35)) = 0.1125225 となる。RD = 0.1125225・2.713052 = 0.3052793 となる。

      第 2 群と第 5 群の比率の差 = 0.7523810 > RD = 0.3052793 なので,「第 2 群と第 5 群の比率には差がある」と結論する。

      次に,第 1 群と第 4 群では,同じようにして,平均比率 = 0.2481203, SD = 0.1228910, RD = 0.3334097 を計算する。

      第 1 群と第 4 群の比率の差 = 0.5523810 > RD = 0.3334097 なので,「第 1 群と第 4 群の比率には差がある」と結論する。

    3. 更に,m = k - 2, k - 3, ... , 2 となるような 2 個の比率の比較を行う。ここで注意すべきことは,対象となる 2 個の比率が,それまでの検定実施の過程で有意差なしとされた比率に挟まれている場合には,検定を実施せずに有意差なしと結論する。例えば,Pa ≧ Pb ≧ Pc ≧ Pd( a = b または c = d の場合を含む )で,a 群と d 群の比率に有意差がなかったとしたら,無条件に a : b,a : c,b : c,b : d,c : d 群にも比率に有意差がないとする。これは,前述( i )の検定結果に対する解釈規定と同じである。
      m = k - 2 の場合について

 以上のようにして得られた全ての結論,すなわち「群 x と群 y,群 u と群 v ... に比率の差が認められた。その他の比率の組合せには有意差は認められなかった」は,全体としての有意水準が α になる。

 例題では,以下のようにまとめることができる。以下に示される組合せ以外の群間には比率の差はない。

比較する群 名義的有意水準 比率の差 RD 判定
第 5 群 vs. 第 1 群0.0050.80000000.3247211有意な差
第 5 群 vs. 第 2 群0.006670.75238100.3052793有意な差
第 4 群 vs. 第 1 群0.006670.55238100.3334097有意な差
第 5 群 vs. 第 3 群0.0100.56879430.2647880有意な差
第 4 群 vs. 第 2 群0.0100.50476190.3261199有意な差
第 3 群 vs. 第 1 群0.0100.23120570.2305387有意な差
第 4 群 vs. 第 3 群0.0200.32117530.2987689有意な差


演習問題


応用問題


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