正規分布へのあてはめ     Last modified: Mar 01, 2004

例題

 「表 1 のような度数分布表に,正規分布をあてはめなさい。」

表 1.度数分布表
 階級   度数  相対累積度数(%)
40 4  0.94   
45 19  5.40   
50 86  25.59   
55 177  67.13   
60 105  91.78   
65 33  99.53   
70 2  100.00   
合計 426 


 観察されたデータが正規分布に従うかどうかは,度数分布表を作成することにより行われる。累積相対度数を 正規確率紙と呼ばれるグラフ用紙に描き,それが直線になれば正規分布であることを意味する(正規確率紙は縦軸に累積相対度数 % を目盛るが,その間隔は等間隔ではない。例えば,$a\%$ と $b\%$ という目盛り間の距離が $\Pr\{Z \gt a\}$ と $\Pr\{Z \gt b\}$ の差であるように目盛られている。累積確率 $F ( x )$ から $T$ 得点を求める表参照)。

 表 1 の度数分布表データをプロットしたものを図 1 に示す。

figure

図 1.正規確率紙による正規性の確認

 しかし,正規確率紙にプロットする方法は目視によるので正確ではない。 解析的には以下のように行う(どの程度よく適合しているかは適合度の検定を行う必要がある)。


計算手順:

  1. $n$ 個のケースが,$k$ 個のカテゴリーに分類されているとする。

    例題では,$n = 426$, $k = 7$ である。

  2. 与えられた度数分布表から,母平均と母分散の推定値 $\bar{X}$,$V$ を推定する。

    各階級の中心点を $X_{i}$,観測度数を $f_{i}$ とすれば, \[ n = \sum_{i=1}^k\ f_i \] \[ \bar{X} = \frac{\displaystyle \sum_{i=1}^k\ f_i\ X_i}{n} \] \[ V = \frac{\displaystyle n\sum_{i=1}^k\ f_i\ X_i^2-\left ( \sum_{i=1}^k\ f_i\ X_i \right ) ^2}{n^2} \] である。

    例題では,平均値$\ = 57.9312$,標準偏差$\ = 5.1335$ である。

  3. 以下のいずれかの方法をとる。

    注:正規分布とどの程度一致するか( しないか )を度数分布図に示すには,方法 B のほうがよい。 ただし,この方法によった場合には,理論度数の合計は $n$ に等しくならない。

 下限点,上限点,級中心は図 2 に示すように決める。例題では,測定精度$\ = 0.1$,階級幅$\ = 5$ である。

 $z$ は各階級の上限点に対する標準化得点,$z'$ は級中心に対する標準化得点。

figure

図 2.限点・級中心の定義

 あてはめ結果は以下のようになる。


表 2.正規分布へのあてはめ例( 方法 A )
階級 $i$ 度数 $f_{i}$ 下限点 上限点 級中心 $x$ $x\ f_{i}$ $x^{2}\ f_{i}$ $z$ $F(z)$ 理論比 期待値
35 0 34.95 39.95 37.45 0.00 0.00 -3.50 0.0002 0.0002 0.1
40 4 39.95 44.95 42.45 169.80 7208.01 -2.53 0.0057 0.0055 2.3
45 19 44.95 49.95 47.45 901.55 42778.55 -1.55 0.0600 0.0543 23.1
50 86 49.95 54.95 52.45 4510.70 236586.22 -0.58 0.2807 0.2207 94.0
55 177 54.95 59.95 57.45 10168.65 534188.94 0.39 0.6529 0.3722 158.6
60 105 59.95 64.95 62.45 6557.25 409500.26 1.37 0.9142 0.2613 111.3
65 33 64.95 69.95 67.45 2225.85 150133.58 2.34 0.9904 0.0762 32.4
70 2 69.95 74.95 72.45 144.90 10498.01 3.32 0.9995 0.0092 3.9
75 0 74.95 79.95 77.45 0.00 0.00 4.29 1.0000 0.0005 0.2
合計 426


24678.70 1440893.57

1.0000 426.0

figure

図 3.正規分布へのあてはめ例( 方法 A )


表 3.正規分布へのあてはめ例( 方法 B )
階級 $i$ 度数 $f_{i}$ 下限点 上限点 級中心 $x$ $x\ f_{i}$ $x^{2}\ f_{i}$ $z'$ $f(z')$ 期待値
35 0 34.95 39.95 37.45 0.00 0.00 -3.99 0.0001 0.1
40 4 39.95 44.95 42.45 169.80 7208.01 -3.02 0.0041 1.8
45 19 44.95 49.95 47.45 901.55 42778.55 -2.04 0.0483 20.6
50 86 49.95 54.95 52.45 4510.70 236586.22 -1.07 0.2197 93.6
55 177 54.95 59.95 57.45 10168.65 534188.94 -0.09 0.3869 164.8
60 105 59.95 64.95 62.45 6557.25 409500.26 0.88 0.2638 112.4
65 33 64.95 69.95 67.45 2225.85 150133.58 1.85 0.0696 29.7
70 2 69.95 74.95 72.45 144.90 10498.01 2.83 0.0071 3.0
75 0 74.95 79.95 77.45 0.00 0.00 3.80 0.0003 0.1
合計 426


24678.70 1440893.57

426.0

figure

図 4.正規分布へのあてはめ例( 方法 B )


演習問題


応用問題


・ 計算プログラム(正規確率紙)[R] [Python]
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