ノンパラメトリック検定の有意確率(P 値)の決定法についてはいろいろめんどうなことがあります。
岩原信九郎 「新しい教育・心理統計 ノンパラメトリック法」 日本文化科学社(これはかなり前から絶版になっているようです)の16頁に解説がありますが,その元は
Armsen, P. (1955): Tables for significance tests of 2x2 contingency tables. Biometrika, 42, 494-511.です。
ノンパラメトリック検定(検定統計量が離散分布するとき)の棄却域を決める3つの方法とは,
これらの方法は,有意確率を求める基準ではないので直接的に適用するのはやっかいなのですが,その趣旨を解釈すると有意確率は以下のように決める方法があろうかと思います。(1) 両側からα/2より小さいが,その範囲でできるだけ多くをとる。(2) H0のもとで(H1に対し)極端な検定統計量に対する確率をその合計が αまたはそれ以下で最大になるまで加える。
(3) 与えられたテスト統計量をEとすると,それを含み,それと同じ極端な 方向(H0のもとで)の統計量を得る確率を全て加えたものをF(E)と する。次にEとは分布の逆の端から確率をF(E)を越えない値まで加え てこれをS(E)とすると,もしF(E)+S(E)≦αなら,そのときだけ H0を棄却する。
Fisher's exact probability test で説明してみましょう。この検定について他の教科書ではどのように書いているかを見てください。(1)’ 観察された統計量を含み,それと同じ極端な方向での確率を全て加える。 次に,それと逆方向で観察された統計量より極端な確率を加える。(2)’ 方向は無視して,生起確率の小さいものから順に加えてゆく。観察された 統計量の生起確率が加えられたら加算を終了する。
(3)’ (3)は(1),(2)とは違い直接的に有意確率を与えているので, (1)’と似ているが, 観察された統計量を含み,それと同じ極端な方向での確率を全て加える。 次に,それと逆方向で生起確率の小さい順に,先に求めた合計値よりも 大きくならない範囲で加えていく。有意確率は2つの合計値の和。
この結果を得るために使用したスクリプトも参照してください。
a b c d ad-bc 分割表の生起確率 累積確率1 累積確率2 0 7 4 3 -28 @ 0.034965034965 0.034965034965 1.000000000000 1 6 3 4 -14 0.244755244755 0.279720279720 0.965034965035 2 5 2 5 0 0.440559440559 0.720279720280 0.720279720280 3 4 1 6 14 0.244755244755 0.965034965035 0.279720279720 # 4 3 0 7 28 @ 0.034965034965 1.000000000000 0.034965034965 #印は観察された分割表(1)’によれば,a = 4, 0 の生起確率の和が有意確率 0.0699
(2)’によれば,a = 0, 4 の生起確率が同じなのでどちらから加え始めるかによっ て結果は異なりますが,多分,観察された生起確率から加え始める方が いいと思いますので,a = 4 のときのみの生起確率が有意確率 0.0350
(3)’によれば,a = 4, 0 の生起確率の和が有意確率 0.0699
a b c d ad-bc 分割表の生起確率 累積確率1 累積確率2 0 71 10 14 -710 @ 0.000000194089 0.000000194089 1.000000000000 1 70 9 15 -615 @ 0.000009186877 0.000009380966 0.999999805911 2 69 8 16 -520 @ 0.000180866635 0.000190247601 0.999990619034 3 68 7 17 -425 @ 0.001957615348 0.002147862949 0.999809752399 4 67 6 18 -330 @ 0.012942012579 0.015089875528 0.997852137051 5 66 5 19 -235 @ 0.054765147967 0.069855023495 0.984910124472 # 6 65 4 20 -140 @ 0.150604156909 0.220459180404 0.930144976505 7 64 3 21 -45 0.266374699295 0.486833879699 0.779540819596 8 63 2 22 50 0.290590581049 0.777424460748 0.513166120301 9 62 1 23 145 @ 0.176881223247 0.954305683995 0.222575539252 10 61 0 24 240 @ 0.045694316005 1.000000000000 0.045694316005 #印は観察された分割表(1)’によれば,a = 0〜6, 9〜10 の生起確率の和が有意確率 0.4430
(2)’によれば,a = 0〜4, 10, 5, 6 の順で生起確率を加えて,有意確率は 0.2662
(3)’によれば,a = 0〜6 までの生起確率の和が 0.2205 で,それを越えない逆方向の和は a = 10 のときのみで 0.0457合計して,有意確率は 0.2662
さて,あなたが使っている統計ソフトはどの基準で計算しているでしょうか。計算の仕方によって,有意になったりならなかったり...ということもあります。