No.23103 変動係数について  【ビギナー】 2021/08/06(Fri) 08:53

変動係数は比例尺度では意味のある値であるが,間隔尺度では意味のない値であると成書に記載されていたのですが,その理由が分かりません。
ご教授いただけないでしょうか。
よろしくお願い致します。

No.23104 Re: 変動係数について  【aoki】 2021/08/06(Fri) 12:54

比例尺度には絶対零があるが,間隔尺度にはないからです。
間隔尺度には絶対零はありません。負や零の測定値を持ちうるのは間隔尺度です。
比例尺度には負の測定値はもとより零すらありません。
変動係数は「標準偏差/平均値」で定義される「比」ですが,比をとることに意味があるのは比例尺度だけです(「比例」,「比」という名前はそのことを表しているのです)。
絶対零が存在しなければ分母が零や負の値になると比をとっても意味をなしません(零の場合には定義すらできませんが)。

世の中に間隔尺度はあまり多くはないですが,温度(摂氏 ℃,華氏 K°)は間隔尺度です。同じ温度であっても絶対温度 K°は比例尺度です。

例を考えて見ましょう。10日分の最低気温(摂氏)が以下のようであったとします。
> C = c(27, 26, 27, 26, 25, 26, 25, 25, 24, 25)
変動係数は以下のようになります。
> sd(C) / mean(C)
[1] 0.03773796
sd(C) も mean(C) も,単位は 「温度」ですから,結果は無名数です。

華氏は「1.8 * 摂氏温度 + 32」です。
> F = 1.8 * C + 32
変動係数は以下のようになります。
> sd(F) / mean(F)
[1] 0.02227158
華氏温度は摂氏温度の線形変換ですが,係数 1.8 と定数 32 をいろいろ変えれば,変動係数はどんな値でも取り得ます。

そもそも分子,分母は「温度をあらわす何らかの数値」ですが,比をとる意味がないのです。

40℃ は 20℃ の 2 倍暑いですか?違いますよね。

さて,同じ温度でも,絶対温度 K°は文字通り「絶対零」を持ちます。

摂氏との関係は単に摂氏での温度に 273.1 を足したものです。
> K = C + 273.1
変動係数は
> sd(K) / mean(K)
[1] 0.003234321
絶対温度は比をとることができます。20℃ と 40℃ は絶対温度では 293.1F°,313.1F°
で,後者は前者に比べて 1.068236 倍暑いとうことができます。

sd(K),mean(K) も比尺度なので,比を取ることができます。

なお,実際の統計学では,変動係数はほとんど使われません(必要がない)。

No.23105 Re: 変動係数について  【ビギナー】 2021/08/09(Mon) 21:02

青木先生

わかりやすく解説いただきありがとうございました。
ここに質問する前に自分なりに成書やネットで調べてみたのですが,丸暗記するだけで理解できませんでした。
青木先生の解説でやっと理解することができました。
間隔尺度の零点は測定値のことであり,無いことを示しているのではない。一方,比例尺度の零点は無いことを示している。
両尺度の零点は意味が全く異なることがわかりました。
変動係数の対象となる尺度は比例尺度のみであることが理解できました。
ありがとうございました。

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