No.22722 Re: クロンバックαの係数 【青木繁伸】 2019/05/05(Sun) 15:00
ある数学的(統計学的)命題が誤りであることを示すには,反例を一つあげれば十分ですね。
妥当なデータを,信頼のおけるプログラムで分析した結果がその命題に反するものであった場合,その命題は誤っているということでしょう。
今の場合,命題は「下位尺度のクロンバックのアルファは全体のクロンバックのα信頼性係数より小さい」ということ。
信頼のおけるプログラムは,たとえば R とか SPSS でいいでしょう。
妥当なデータというのはちょっとやっかいで,確かにそのようなデータがあるということでは不十分なのです。その統計手法が想定している条件を満たしているデータでなければいけません。
ク ロンバックのα信頼性係数は各質問項目への回答の不偏分散の和と各質問項目への回答の合計値(尺度値)の不偏分散で決まります。合計値の計算の元になる各 質問項目間の相関の符号は一致していますか?もし,符号が一致しない項目があると合計を取るときに項目間で多少の値の打ち消しが起こり合計値の分散は小さ くなり,必然的に各項目の分散の合計との割合は大きくなります。そして,クロンバックのαは小さくなります。もし,下位尺度にこのような符号の不一致がな い場合はその尺度のクロンバックのα信頼性係数は小さくはならないでしょう。そうすれば,全体のクロンバックのα信頼性係数のほうが小さくなってしまうと いうこともありえるでしょう。
以下のようなn=15, 9変数(下位因子数3個ずつ)のデータでx1 x2 x3 y1 y2 y3 z1 z2 z3全体のクロンバックのα信頼性係数は 0.8022528 であり,下位尺度のクロンバックのα信頼性係数は 0.8212634, 0.5153157, 0.4307981 となっていることが,エクセルでちょっとした計算をするとわかります。
39 37 50 72 50 52 47 63 65
42 48 39 46 47 56 48 48 40
48 54 50 53 43 55 52 55 58
32 30 29 43 26 48 25 50 40
54 39 39 46 57 55 47 31 48
42 50 44 34 38 49 59 29 55
56 62 61 52 50 54 60 49 75
57 51 55 61 56 39 68 51 51
47 65 69 58 59 51 61 61 53
48 50 45 36 51 24 43 43 41
73 66 54 40 56 49 46 60 44
49 48 47 45 43 39 45 54 45
46 50 56 58 67 50 55 49 45
61 56 51 54 59 60 48 57 50
57 44 61 53 47 67 45 51 40
原因は,相関係数行列をみるとわかりますが,4つの項目間の相関係数がほんのちいさな負の相関を持っているからです。
通常は,尺度を作る際にこのような項目は選ばれないと思いますが,こんなこともあるよということを示すために掲示しておきます。
No.22723 Re: クロンバックαの係数 【wtcs】 2019/05/05(Sun) 17:21
青木先生
早々のご回答をありがとうございました。
データの因子行列を確認しました。符号の一致しない(負の相関)因子構造はありませんでした。
分散の大きさなどはあまり意識していませんでした。とても勉強になりました。
青木先生のデータ例から,査読者へも回答できそうですし,尺度の信頼性を確認でき安心しました。
ありがとうございました。
● 「統計学関連なんでもあり」の過去ログ--- 048 の目次へジャンプ
● 「統計学関連なんでもあり」の目次へジャンプ
● 直前のページへ戻る