No.14829 平均値の推定と大標本論  【宿川】 2011/06/24(Fri) 09:41

標本平均からの母平均推定について勉強していて,
ケースによる違いがよくわからなかったので教えて頂けないでしょうか。

母分散が既知の場合
 母分散とzを使う
母分散が未知の場合
 推定値として不偏分散を使う
  サンプルサイズが小さい場合 tを使う
  サンプルサイズが大きい場合 zを使う

これらはいずれも母集団の分布系が正規分布であると仮定したパラメトリックの検定ですよね?
母集団の分布系が正規分布と仮定できない時はどうするんだろう,という疑問は
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/mb-arc/arc043/12127.html
の過去ログなどを拝見し,とりあえず今の私の理解は「またそれはそれで別の手法がある」とだけに留めておいて,もうひとつ疑問があります。

青木先生のログにはしばしば「大標本論による検定は旧時代的」という言葉が出てきます。つい先日の過去ログにも同じ内容のお話がありました。
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/taygeta/statistics.cgi?mode=res&no=14462

> 大標本論による検定は,旧時代的です。サンプルサイズがどんなに大きくても,t検定を行えばよいのです。そのような場合には,t分布が標準正規分布で近似 できるだけです(正確な計算ができるのに近似計算をするのは無意味だ)。標準正規分布表に頼って(あるいは,1.96というマジックナンバーを使って)検 定をしなければならない時代ならともかく。

の下りもそうですが,これは逆に問うと,なぜ旧時代は近似値である正規分布,あるいは1.96を使っていたのですか?単純に手計算に頼っていた時代や,コンピュータの計算力が満足でない時代だったため,といった事情ですか?

No.14830 Re: 平均値の推定と大標本論  【青木繁伸】 2011/06/24(Fri) 12:37

> なぜ旧時代は近似値である正規分布,あるいは1.96を使っていたのですか?単純に手計算に頼っていた時代や,コンピュータの計算力が満足でない時代だったため,といった事情ですか?

そういうことです。正確な P 値なんて,求められなかったのですから。

No.14831 Re: 平均値の推定と大標本論  【宿川】 2011/06/24(Fri) 13:25

なるほど,ありがとうございます!
実用上の問題でのことなのですね。

母集団が正規分布である(とした)のだから,母分散が既知の場合正規分布を使う

母分散が未知の時,自由度(n-1)の不偏分散を母分散の推定値とした

すると統計量は正規分布には厳密には従わない。特にnが小さいほど乖離する。

自由度(n-1)のt分布に従うことが判った(従う分布をt分布と名付けた)

だから母分散が未知の時はzではなくtを使う

演算能力が足りず正確なP値を求められない時代,世論調査などの大標本ではt分布は正規分布に近似するので,正規分布で代用していた

現代は正確なP値を求めるだけの演算能力があるから素直にtを使えば良い

拙い理解ですが,このような背景であっていますか。
正規分布の代用として出来たt分布が,演算能力のために逆に正規分布で代用されることになってしまったという感じなのでしょうか。

No.14832 Re: 平均値の推定と大標本論  【青木繁伸】 2011/06/24(Fri) 13:53

> このような背景であっていますか。

あっているでしょう。

No.14833 Re: 平均値の推定と大標本論  【宿川】 2011/06/24(Fri) 14:14

Webサイトでも本でも「なぜその分布を使うのか」までしっかり解説してくれていることがほとんどないので,とてもスッキリしました。

ありがとうございました。

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