No.13323 多母集団におけるパス係数の差の検定  【Power】 2010/08/26(Thu) 09:56

本サイトにはいつも大変に勉強をさせてもらっています。ありがとうございます。

AMOSでは,パス係数な どモデルの各推定値に関する集団間の差異を検定できます。その際,テキスト出力の「パラメータの一対比較」を見ます。そこで,比較したい推定値の組み合わ せ部分の数値をチェックし,これが1.96以上であれば5%水準で差がありと判断します。教科書ではそのように解説されます。この点に関して,2つの質問 です。

1)この検定統計量は,z値を表しているのでしょうか。豊田(2007)『共分散構造分析 AMOS編』東京図書,にはそのような記述があります。確かにt値であれば,自由度を考慮しないと1.96以上で有意であると自動的に判断できません。

2)パス係数の差の検定に仕方が分かるテキスト(英語でも可)のようなものがあれば教えてください。ただしこの質問はご面倒であればスルーしてください。

と ころで偏回帰係数の検定などには,推定値/推定値の標準誤差 によって求めされるt値を使います。それを考えるとパス係数の差の検定がzであることが直感 的には理解できませんでした。これは,そもそもパス係数の差の検定の式や仕組みが良く分かっていないことに起因する疑問です。よいテキストがあれば英語で も構いませんのでご教示ください。

お忙しいところ恐れ入ります。ご回答を賜れば幸いです。よろしくお願いいたします。

No.13325 Re: 多母集団におけるパス係数の差の検定  【青木繁伸】 2010/08/26(Thu) 11:31

一般的に,ある統計量(a1, a2)とその標準誤差(s1, s2)のセットが2つあるとき,統計量の差を検定するのは abs(a1-a2) / sqrt(s1^2+s2^2) が漸近的に正規分布に従うことを用います。
常識的なもので(?)特にどの教科書に書いてあるというものでもないように思いません。
AMOS がそのように計算しているかどうかについて直接の確証はありませんが,AMOS の出力に基づいて計算してみると丸めの範囲内で一致していることが確かめられるでしょう。例えば,http://psy.isc.chubu.ac.jp/~oshiolab/teaching_folder/data_b/06/04.html の 2/3 位の位置にある「結果」の「係数」および「共分散」とその下にある「パラメータの一対比較」の表で計算してみればよいと思います。AMOS の検定統計量の符号の決め方がちょっと特殊だが,符号はどうでもよいので。
> test <- function(a1, s1, a2, s2)
+ {
+ return(abs(a1-a2)/sqrt(s1^2+s2^2))
+ }
> # 係数 男と女の比較
> test(0.636, 0.125, 0.624, 0.143) # mp1, fp1
[1] 0.06318065
> test(0.334, 0.142, 0.173, 0.133) # mp2, fp2
[1] 0.8275147
> test(-0.352, 0.112, -0.059, 0.093) # mp3, fp3
[1] 2.012665
> # 共分散 男と女の比較
> test(0.259, 0.096, 0.213, 0.065) # mc1, fc1
[1] 0.3967729
> test(-0.003, 0.094, 0.223, 0.093) # mc2, fc2
[1] 1.709132
> test(-0.069, 0.108, 0.023, 0.080) # mc3, fc3
[1] 0.6845117

No.13326 Re: 多母集団におけるパス係数の差の検定  【Power】 2010/08/26(Thu) 13:10

青木先生,的確で迅速にご回答をいただき本当にありがとうございました。

実際に自分で検算してみてもAMOSの結果に一致しました。

//一般的に,ある統計量(a1, a2)とその標準誤差(s1, s2)のセットが2つあるとき,統計量の差を検定するのは abs(a1-a2) / sqrt(s1^2+s2^2) が漸近的に正規分布に従う//

という常識的な知識が欠落していたのですね。不勉強を反省したいと思います。そうすると検定統計量はやはりzとなりますね。

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