No.13078 多重比較を用いるべき局面 【Confused scientist】 2010/07/16(Fri) 07:55
多重比較法について,以前から素朴な疑問を抱いている者です。以下の2つの典型的な状況について,多重比較を用いるべきなのか,あるいはどのように用いるべきなのか,ご教示いただけませんでしょうか。できれば文献情報も含めて教えていただければ非常に助かります。
1)
ある生物について産地が異なるA,B,Cという3つの標本があるものとします。この生物の体重が産地間で異なるかどうかを調べるため,t検定を3回くり返
します。このような場合は,明らかに多重検定の問題が生じますので,sequential
Bonferroni(Holm法)あるいはBenjamini &
HochbergのFDR調整法などで棄却域を補正してやる必要がありますよね(ここではTukey-Kramerなどのspecificな方法ではな
く,どんな検定にも用いることのできる補正法を使って話をします)。
問題は,ここでもう1つ,体長について測定をおこない,同様のt検定を3回
くり返した場合です。つまり,体重についても3回,体長についても3回のt検定をくり返した場合,棄却域の補正はどの範囲でおこなうべきなのでしょうか。
私自身は,体重,体長それぞれについて,3回のくり返しがあると見なして,別々に補正をおこなってきました。しかし,ひょっとしてこのような場合,体重と
体長あわせて「6回のくり返しがある」と見なし,同時に補正をおこなうべきなのでしょうか。そうすると,たとえばこの生物のいろいろな形質について測定を
行った場合には,3x(形質数)回のくり返しがあると見なして補正をおこなうことになり,形質数が多くなればなるほど既存の補正法では(たとえFDR調整
法を用いても)有意差は出にくくなります。それでも理屈として正しいのであればこのような方法を適用することに何ら抵抗はないのですが,いかがでしょう。
2)
以前,さまざまな生物種について雌雄の個体数比を野外で調べた研究について,生物種ごとに1回の二項検定をおこなったところ「これは生物種の数だけ検定を
くり返しているので,多重比較法で補正する必要がある」との批判がありました。しかし私は,そもそも異なるデータセットについておこなわれた検定につい
て,このような補正が必要なのかどうか,非常に疑問に感じました。一般論として,多重検定は「同じデータセットあるいはその一部に対する検定がくり返され
た場合」に限るのではないのでしょうか?文献で調べてもそのような説明は見つからず,考えてもよくわからないままでおります。
以上です。長い質問ですみません。よろしくお願いします。
No.13081 Re: 多重比較を用いるべき局面 【青木繁伸】 2010/07/16(Fri) 17:12
多重比較の原則は,「検定全体の第一種の過誤を一定レベルに抑える」ということで,「検定全体」がどのような範囲
であるかは,場合場合によって違うということに尽きるでしょう。体重と身長の結果を別々に取り扱うのかトータルに取り扱うのかで違ってくるでしょう。生物
種ごとに行う場合も,生物種全体について結論を述べるような場合には多重比較になるのでしょう。個別の種について個々に述べるなら多重比較ではないでしょ
う。
No.13082 Re: 多重比較を用いるべき局面 【Confused scientist】 2010/07/16(Fri) 21:19
さっそくのお返事ありがとうございました。なるほど,どの範囲について結論を述べようとするかによって異なるので
すね。たしかに言われてみればその通りだと思います。今後はその点に留意してきちんと使い分けようと思います。的確なご指摘,非常に助かりました。重ねて
お礼申しあげます。
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