No.12766 Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【しょうじ】 2010/06/02(Wed) 21:06

こんにちは,Propensity Scoreを用いた共変量の調整についてご教示下さい。

死亡をアウト カムとして,要因Xの影響を比例ハザードモデルで検討しています。要因Xは血中濃度の検査値で,連続変数です。アウトカムの発生数が25のため同時に多数 の交絡因子の調整を行うことができないので要因X以外の多数の変数の調整にPropensity Scoreを用いたいと考えています。

お 尋ねしたいのは,Propensity Scoreの推定方法です。一般にロジスティック回帰を用いることが多いそうですが,この場合,要因XをHigh XとLow Xに二区分して回帰モデルを作成すればよいのでしょうか?元々連続変数であるものをカテゴリー化することが妥当なのか判りません。

なお,比例ハザードモデルにおいては死亡をアウトカム,Propensity Scoreを共変量として要因Xと同時にモデルに投入する予定です。

何卒,ご教示賜わりますようお願い申し上げます。

No.12769 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【surg】 2010/06/03(Thu) 08:15

私の知っている限りでは,Propensity Scoreは介入群と非介入群間のマッチングの手法だと思っていたのですが,そのような使い方もあるのですか?

そのような事例をご存知でしたら,是非ご教示いただけませんでしょうか.

No.12770 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【しょうじ】 2010/06/03(Thu) 08:42

replyありがとうございます。

propensity scoreを用いた調整には,1)マッチング,2)層別解析,3)共分散分析の方法があると以下に記載があります。

「医学的研究のための多変量解析」p.157-161 Katz著,木原雅子/木原正博監訳

「傾向スコアを用いた共変量調整による因果効果の推定と臨床医学・疫学・薬学・公衆衛生分野での応用について」星野崇宏,岡田謙介 J.Natl.Inst. Public Health. 55(3) p.230-243
http://www.niph.go.jp/kosyu/2006/200655030007.pdf

後者において,共分散分析の事例が紹介されています。しかしながら,いずれも薬剤の使用を共変量によって説明するモデルを設定し,propensity scoreを推定しています。今回私が検討したいのは血中濃度Xが死亡に与える影響です。血中濃度Xとアウトカムに対して交絡の可能性のある要因を propensity scoreで要約するためには,どのようにしてモデルを作成すればよいのでしょうか?あるいは,このような応用は間違っているのでしょうか。

 ご教示下さいます様,よろしくお願いします。

No.12771 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【surg】 2010/06/03(Thu) 09:15

ありがとうございます.拝読させていただきました.

propensity scoreの目的は,介入の有無等による2群間の比較において,モデルから共変量を除去することにあります.したがって,しょうじさんの今回の目的にはそぐわないかと存じます.

No.12772 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【しょうじ】 2010/06/03(Thu) 15:01

重ねてreplyをいただきありがとうございます。感謝申し上げます。

さて,propensity scoreによる共変量の調整の実例として以下の論文があります。(今朝は十分な時間が無く,お示しすることができませんでした。申し訳ありません)

Serum Indoxyl Sulfate Is Associated with Vascular Disease and Mortality in Chronic Kidney Disease Patients.
http://cjasn.asnjournals.org/cgi/content/abstract/4/10/1551

これは全死亡および心血管死をOutcomeとし,インドキシル硫酸(IS)なる尿毒症毒素の影響を検討した論文です。年齢,アルブミン,propensity scoreで調整してもインドキシル硫酸高値が死亡リスクの上昇と関連していたとされています。

A supplementary Cox regression model including age, albumin, and the calculated propensity score (by quartiles), to better adjust for confounders as detailed in the methodology section, confirmed that the patients in the 3rd IS tertile were at increased risk of death (risk ratio = 13.18; P = 0.013).

methodでは,イベントが少なく(私たちのdataと偶々同数です)3つ以 上の変数をモデルに投入できない問題を解決するため,propensity scoreを含めてCox回帰を行ったとあります。propensity scoreは,個々の暴露の確率を測定した交絡因子(ヘモグロビンと動脈石灰化指数)から推定したように書かれています。

The limited number of events (n = 25) did not allow us to include more than three variables for each model. To overcome this problem, supplementary Cox regression analyses were performed including a propensity score adjustment, which considers the probability of exposure for each individual for measured confounding variables (i.e., hemoglobin and aortic calcification score), as detailed elsewhere (19).

(19)は,Fitzmaurice, G: Confounding: propensity score adjustment. Nutrition 22: 1214-1216, 2006 です。

exposureは主題のインドキシル硫酸であると思うのですが,この理解は正しいでしょうか?interventionとは書かれていませんし,これは観察研究でかつ治療介入の影響は検討されていません。

こ の論文では,propensity scoreを推定する際に二区分変数(1st and 2nd tertileと3rd tertileに二分)にしたインドキシル硫酸を目的変数にしたロジスティック回帰モデルを用いているのでしょうか?連続変数のインドキシル硫酸を目的変 数にした重回帰モデルでは,そもそもpropensity scoreにならないように思います。なお,引用文献(19)には,このような詳細については触れられていません。

御指導頂ければ幸いに存じます。長文失礼しました。

No.12789 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【hoshi】 2010/06/07(Mon) 19:02

独立変数は治療介入などでなくてもかまいません。

ISで3分位を作り「最上位群とそれ以外」で死亡率を比較すると,差がある。
ISの「最上位群かそれ以外か」の群別を年齢等で説明する傾向スコアをロジスティック回帰分析モデルで計算し,それを群別のダミー変数とともにCox回帰モデルに投入しても,「最上位群かそれ以外か」での死亡率の差が残る,ということだと思います。

No.12790 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【surg】 2010/06/07(Mon) 19:53

参考文献等,ご教示戴けませんでしょうか。

No.12791 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【hoshi】 2010/06/07(Mon) 20:47

何の参考文献を必要とされているのでしょうか?
介入でなくてもよい,というものならば,統計学的には無作為化されていない介入も(今回のような)群別もまったく同じですので,問題ありません。

実際に利用されている例ならば

「傾向スコアを用いた共変量調整による因果効果の推定と臨床医学・疫学・薬学・公衆衛生分野での応用について」星野崇宏,岡田謙介

にも引用されていますが

Mehdi H. Shishehbor; David Litaker; Claire E. Pothier; et al.
"Capacity, Heart Rate Recovery, and All-Cause Mortality
Association of Socioeconomic Status With Functional Capacity, Heart Rate Recovery, and All-Cause Mortality"

JAMA. 2006;295(7):784-792.

ではSESを4分位で分け,各群への群別に影響を与える共変量を傾向スコアで調整しても死亡率に差があるという解析がされています。

これで良いでしょうか?

No.12792 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【しょうじ】 2010/06/07(Mon) 23:09

ご教示いただき,ありがとうございます。感謝申し上げます。

傾向スコアを推定したのちのCox回 帰モデルに関してお伺いしたいことがあります。ISの解析をした論文では,ISも傾向スコアもカテゴリー変数としてCox回帰モデルに投入しています。し かし,元々はISも傾向スコアも連続変数です。Cox回帰モデルにおいてISならびに傾向スコアを連続変数で入れてよいか,あるいはカテゴリー変数で入れ なければならないかという判断は何が基準になりますでしょうか?Cox回帰モデルの成立に必要な仮定を満たすのであれば,連続変数でCox回帰モデルに投 入しても問題はないでしょうか?

No.12795 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【hoshi】 2010/06/08(Tue) 09:55

> ISの解析をした論文では,ISも傾向スコアもカテゴリー変数としてCox回帰モデルに
> 投入しています。しかし,元々はISも傾向スコアも連続変数です。

ISの解析をした論文がなぜ傾向スコアをカテゴリー変数としたのかは原論文が手元にないので不明ですが,傾向スコアを用いて解析をしている以上,ISは2値化したもの,傾向スコアは連続値として投入します。
「IS の2群での生存率の差がある」が,交絡要因の影響を取り除いていないという批判に対応するために,「交絡要因を傾向スコアに一次元化して除去したが,それ でもISの2群での生存率の差がある」ことを言うのが傾向スコアを用いた解析であって,ISをそのまま連続変数として利用したい場合には傾向スコアは使え ません。

実は連続変数への拡張も存在しますが,私は医学研究で使われた例を知りませんし,サンプルサイズが小さい場合には結果が不安定になり使えないと思います。

No.12796 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【surg】 2010/06/08(Tue) 09:57

> Mehdi H. Shishehbor; David Litaker; Claire E. Pothier; et al.
> "Capacity, Heart Rate Recovery, and All-Cause Mortality
> Association of Socioeconomic Status With Functional Capacity, Heart Rate Recovery, and All-Cause Mortality"
> JAMA. 2006;295(7):784-792.
> ではSESを4分位で分け,各群への群別に影響を与える共変量を傾向スコアで調整しても死亡率に差があるという解析がされています。

この論文ではpropensity scoreは計算されていません。SESスコアの四分位の最低位と最高位の集団を年齢・性別等で3579例ずつマッチングさせて生存分析等を行っております。いわゆる通常のpropensity analysisですね。

引き続き,参考文献等ございましたらよろしくお願い致します。

No.12797 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【しょうじ】 2010/06/08(Tue) 10:29

重ねてreplyをいただき,ありがとうございます。

>「ISの2群での生存率の差があ る」が,交絡要因の影響を取り除いていないという批判に対応するために,「交絡要因を傾向スコアに一次元化して除去したが,それでもISの2群での生存率 の差がある」ことを言うのが傾向スコアを用いた解析であって,ISをそのまま連続変数として利用したい場合には傾向スコアは使えません。

ご教示いただき,ありがとうございました。

>ISの解析をした論文がなぜ傾向スコアをカテゴリー変数としたのか

これについては, No. 12772のポストでもお示しした以下の文にby quartilesとあるのみで,それ以上の記載はありませんでした。

A supplementary Cox regression model including age, albumin, and the calculated propensity score (by quartiles), to better adjust for confounders as detailed in the methodology section, confirmed that the patients in the 3rd IS tertile were at increased risk of death (risk ratio = 13.18; P = 0.013).

No.12798 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【hoshi】 2010/06/08(Tue) 11:53

surg様

JAMA論文について

>この論文ではpropensity scoreは計算されていません。
786頁の15行に
Since individuals with lower SES may encounter greater barriers in obtaining
care despite having characteristics or engaging in behaviors that increase risk for cardiovascular disease, we created a propensity score based on the variables shown in TABLE 1.6,9,10,37 This score wasthen used to match individuals with the lowest and highest quartiles of SES score.
とありますので,傾向スコアを利用してマッチングしていますが,計算していないというのは何を根拠におっしゃっているのでしょうか?

No.12799 Re: Propensity Scoreを用いた共変量の調整について  【surg】 2010/06/08(Tue) 16:37

SES四分位の上位群・下位群間で,propensity scoreによるケースマッチングをしたものと理解しました。
誤解をご指摘いただき,ありがとうございます。

# この論文は以前読んだことがあるのですが,ご指摘の部分は見落としていたようです。

● 「統計学関連なんでもあり」の過去ログ--- 043 の目次へジャンプ
● 「統計学関連なんでもあり」の目次へジャンプ
● 直前のページへ戻る