No.12708 重回帰分析における調整因子について  【佐藤】 2010/05/24(Mon) 21:10

お世話になります.統計学を多くの先生に指導を受けながら,独学でやっている臨床医です.
研究で癌の罹患リスクに ついての検討を行いました.「ある臓器の容積が大きいほど癌のリスクが高くなる」という内容の検討を重回帰分析でオッズ比で表現したいと考えています.年 齢とともに臓器容積がわずかながら低下することが知られていますので,症例の年齢+-2歳で年齢でマッチさせた症例対照研究を行いました.症例の臓器容積 を4分位で分類し,1つカテゴリーが上がるごとにオッズ比が徐々に増加することを証明したいと考えています.
症例と対照で有意差が見られる因子を 調整因子として解析を行ったのですが,この際に年齢も調整因子に入れることは誤った検討なのでしょうか.欧米の臨床を主体とした学術雑誌に投稿したとこ ろ,年齢でマッチさせた症例対照研究での解析に年齢で再度調整を行うのは間違った方法である,と指摘されました.これまで,こういう場合には年齢も入れて 解析を行うと指導を受けてきましたのですが,自信がなくなってしまいました.本当に基礎的な内容と思われますが,どうぞ,ご指導頂きたく,よろしくお願い いたします.

No.12710 Re: 重回帰分析における調整因子について  【青木繁伸】 2010/05/24(Mon) 21:51

> こういう場合には年齢も入れて解析を行うと指導を受けてきましたのですが,自信がなくなってしまいました

マッチング要因を,説明変数にするのはそもそも,意味がないことです。
例 えば,年齢でマッチングした対象で,年齢に有意差があるかないかを検定しても意味がないでしょう?完全なマッチングができていれば平均年齢は全く一致する でしょうし,若干マッチングがずれていても有意な差がある等という結果は出ないでしょう(有意な結果が出たら,それはマッチングできていないということで すから)。

> 「ある臓器の容積が大きいほど癌のリスクが高くなる」という内容の検討を重回帰分析でオッズ比で表現したいと考えています

ど のようにやっているのかわからないのですが,重回帰分析をやっているのですか?何が従属変数ですか?「リスク」というのは発癌リスクですね?発癌リスクを どのように測定しているのですか?発癌した・しないというデータなら,重回帰分析ではなくロジスティック回帰ではないですかねえ?

No.12719 Re: 重回帰分析における調整因子について  【佐藤】 2010/05/25(Tue) 21:20

ご指導頂きまして,ありがとうございます.間違えるのにひどすぎました.おっしゃる通り,ロジスティック回帰分析でした.

少し具体的な内容を書かせて頂きます.
乳 癌の罹患リスクを検討するのに,乳腺X線撮影の画像を用いて,乳腺の量(医学的には濃度なのですが,説明を簡単にするためにこの言葉を使います)を計測し ています.最終の目的は乳腺の量が多いほど,罹患のリスクが高い,ということを証明することです.乳腺の量はこれまでの多くの研究で年齢,初潮年齢,出産 数,初産年齢,授乳期間,乳癌の家族歴,閉経年齢などの生殖歴やBMIなどに関連があるとされてきました.

そこで,今回症例+−2歳でマッチングを行った症例対照研究を行いました.最初に乳癌と非乳癌症例でBMI,初潮年齢,出産数,初産年齢,授乳期間,家族歴を比較したところ,癌症例で有意に出産数が少なく,BMIが高く,家族歴が多いという結果が出ました.
そ こで次にロジスティック回帰分析で対照の乳腺の量を4分位で分類し,カテゴリーごとのオッズ比の変化を観察し,最終的にはカテゴリーが上がるごとに(乳腺 の量が多くなるごとに)オッズ比が徐々に増加することを証明したいと考えました.結果はカテゴリーごとに少しずつ上昇し,乳腺の量が最低のカテゴリーと最 高のカテゴリーでは有意差を持ってオッズ比2.2でした.傾向検定 p=0.008でした.
この際にBMIと出産数と家族歴を調整因子として使用 しました.さらに年齢も調整因子に入れることは誤った検討なのでしょうか.欧米の臨床を主体とした学術雑誌に投稿したところ,年齢でマッチさせた症例対照 研究での解析に年齢で再度調整を行うのは間違った方法である,と指摘されました.これまで,こういう場合には年齢も入れて解析を行うと指導を受けてきまし た.年齢でマッチさせていても,新しくカテゴリーを作っているのだから,年齢での調整は必要だと指導を受けてきました.
違うのでしょうか,なにとぞ,ご指導をお願いいたします.

No.12720 Re: 重回帰分析における調整因子について  【青木繁伸】 2010/05/25(Tue) 22:56

12710 に書いたのですけど。..

マッチング要因を,説明変数にするのはそもそも,意味がないことです。
例 えば,年齢でマッチングした対象で,年齢に有意差があるかないかを検定しても意味がないでしょう?完全なマッチングができていれば平均年齢は全く一致する でしょうし,若干マッチングがずれていても有意な差がある等という結果は出ないでしょう(有意な結果が出たら,それはマッチングできていないということで すから)。

No.12722 Re: 重回帰分析における調整因子について  【surg】 2010/05/26(Wed) 08:24

マッチド・ケースコントロール研究の場合は通常のロジスティック回帰ではだめで,条件付きロジスティック回帰 (conditional logistic regression) を使わなければなりません.和文だとあまりいいテキストが見当たらないのですが,丹後らの「ロジスティック回帰分析−SASを利用した統計解析の実際−」 のp.31あたりを参照されてはいかがでしょうか.浜島の「多変量解析による臨床研究」p.97でも少し触れられています.

# いずれにせよ,マッチングに使用した変数をモデルに組み込んではいけないことは,青木先生のご指摘の通りです.

No.12732 Re: 重回帰分析における調整因子について  【佐藤】 2010/05/28(Fri) 22:51

論文を作成する前に,疑問に思って何度も指導者に確認したのですが.
自分できちんと勉強します.

ありがとうございました.

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