No.11394 2項目での尺度構成に信頼性係数、主成分分析、因子分析を用いることの是非  【Takku】 2009/12/03(Thu) 05:17

心理学では,尺度構成の方法として(1)信頼性係数に基づく単純加算,(2)主成分分析,(3)因子分析の3手法がよく用 いられます。これらは基本的に3つ以上の項目群を少数の変数にする(情報を集約する)ことを目的として行われると理解しています。ここで,仮に項目が2つ だった場合にこれらの手法を用いることの是非について意見をお聞きできたらなと思います。

個人的には,「違和感はあるが,誤りとは言えな い」のかなと思っています。というのも,数式を見る限りでは項目数の制限があるように見えないためです。ただ,「2項目のときはPearsonの相関係数 を見て判断するんだよ」と聞いたこともありますし,情報の集約という観点から考えると大きな効果があるのか怪しいところです。

僕個人は以上のように考えていますが,心理学に関しても統計学に関してもまだまだ未熟者で,数式に関してはわかるところだけしか見ていない可能性が高いです。知識も経験も豊富なみなさまのご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。

No.11399 Re: 2項目での尺度構成に信頼性係数,主成分分析,因子分析を用いることの是非  【青木繁伸】 2009/12/03(Thu) 09:39

> これらは基本的に3つ以上の項目群を少数の変数にする(情報を集約する)ことを目的として行われると理解しています

正確には違うでしょう。情報の縮約は主成分分析。因子分析は潜在因子の推定。
単純加算というのは,尺度得点の計算法であり,他の方法と同じレベルで言えば(何の根拠もなく)全部一緒くたにするということでしょう。
尺 度得点は所詮,元の変数の重み付け合計得点にすぎません。二変数 x, y の場合なら,単純加算は重みが1で,1*x+1*y であるにすぎません。主成分得点でも因子得点でも,結果としては a*x+b*y に過ぎないわけで,重みだけ見た場合には形式的には何の違いもありません。しかし,作られる合成得点の持つ意味は異なります。つまり,主成分得点は情報を 縮約するものであり,因子得点は潜在因子の強さ,単純合計は特別な意味は持たないなどということになります。また,単純合計の場合には変数間の相関などは 全く考慮されませんが,主成分得点,因子得点は変数間の相関の大きさによって取る値は変わってきますので,一概には言えません。なお,2変数の場合の主成 分得点も因子得点も,結果的には重みの等しい合成変数と同じになります。あなたの持っているデータで,3つの方法によって得られる合成得点を比較してみる とよいと思います。
set.seed(123)
d <- gendat2(10, 0.5)
pca.score <- prcomp2(d, pcs=2, score=TRUE) $scores[,1]
pfa.score <- unname(pfa(d)$scores)
simple.score <- apply(d, 1, sum)
d2 <- data.frame(simple.score, pca.score, pfa.score)
plot(d2)

simple.score pca.score pfa.score
Obs.1 1.8128852 -1.3512448 0.90082989
Obs.2 0.2914756 -0.2172531 0.14483541
Obs.3 0.1785656 -0.1330949 0.08872995
Obs.4 -0.1681473 0.1253296 -0.08355305
Obs.5 -1.3213696 0.9848908 -0.65659385
Obs.6 2.5483107 -1.8993986 1.26626575
Obs.7 0.4582051 -0.3415259 0.22768393
Obs.8 -3.6065898 2.6881933 -1.79212886
Obs.9 0.9261456 -0.6903082 0.46020545
Obs.10 -1.1194811 0.8344119 -0.55627461

相関係数行列
simple.score pca.score pfa.score
simple.score 1 -1 1
pca.score -1 1 -1
pfa.score 1 -1 1


No.11410 Re: 2項目での尺度構成に信頼性係数,主成分分析,因子分析を用いることの是非  【Takku】 2009/12/03(Thu) 23:53

青木先生

お返事ありがとうございます。

先生の書かれた内容から判断するに,項目 数が2しかなくても信頼性係数を算出したり主成分分析や因子分析を行ったりすることに問題はないということでよろしいでしょうか。自分がこれらの尺度構成 手法を学んだときに「項目数が3以上だよ」と教えられたので違和感を覚えたようです。

3手法の違いについてもご解説くださりありがとうございます。一応それぞれの違いについてはある程度理解しているつもりで,解説の内容はそれに沿うものだったので安心しました。

ちなみに,主成分分析と(探索的)因子分析は,想定しているモデルや計算方法が違うだけで,実際の場面ではどちらも「情報の縮約」を目的として使われているように思うのですが,いかがでしょう。

No.11411 Re: 2項目での尺度構成に信頼性係数,主成分分析,因子分析を用いることの是非  【青木繁伸】 2009/12/04(Fri) 00:29

> 項目数が2しかなくても信頼性係数を算出したり主成分分析や因子分析を行ったりすることに問題はないということでよろしいでしょうか。自分がこれらの尺度構成手法を学んだときに「項目数が3以上だよ」と教えられたので

2変数でも数式的にはなんの問題もないと言うことです。しかし,その場合には繰り返しますが,単純合計でも,主成分得点でも,因子得点でも全く同じものになってしまうということです。2変量の場合には多変量解析ではないということになりますね(^_^;)

また,ある尺度が2つの質問だけでできている場合,いくらクロンバックのアルファが大きな値を持っていても,多くの人はその尺度に対して疑問を投げかけるでしょう。計算できるということと,意味があると言うことは違うと言うことですね。

> 実際の場面ではどちらも「情報の縮約」を目的として使われているように思うのですが

混 同しているとか,同じものとして扱っている人は多いかもしれませんが,モデルがまるっきり逆なので,因子分析を情報の縮約と見るのは違うと思いますね。主 成分分析で情報の縮約というのは,多数の観測変数から少数個の合成変数を作るという意味での縮約であって,因子分析で少数個の共通因子が複数の観測変数の 背後にあるというのは,少数個の共通因子が多数の観測変数を生み出すという拡大の方向であって,観測変数を少数個の共通因子に縮約するというのは考え方が 変でしょう。

No.11412 Re: 2項目での尺度構成に信頼性係数,主成分分析,因子分析を用いることの是非  【Takku】 2009/12/04(Fri) 02:17

やはり数式的には問題ないと。まぁ2項目で尺度構成するなんて状況にならないように調査項目をしっかり練りなさいということですかね。

> モデルがまるっきり逆なので,因子分析を情報の縮約と見るのは違うと思いますね。

仰 ることはよくわかります。想定している因果の方向が正反対ですものね。「観測変数を少数個の共通因子に縮約するというのは考え方が変でしょう」というのも そのとおりだと思います。ただ,実際に研究を行う際には,「●●という概念を測定したい」という目的が最初にあって,それを測定するためにいろいろな項目 を用意するじゃないですか。ここは多くの研究者に共通だと思いますが,データを主成分分析にかけるか因子分析にかけるかという違いは,分野や研究者の趣味 や目的や現実的な理由によると思います(潜在因子を想定できない場合は因子分析は不適切ですが)。そういう意味では両者に違いはないのかなと思ったわけで す。

蛇足ですが,一部の統計パッケージの因子分析のデフォルトが主成分法による推定になっているのは,先生の「混同しているとか,同じものとして扱っている人は多いかもしれません」というご指摘の傍証かもしれませんね。

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