No.11051 なぜ層の併合ができないのかについて  【dxdt】 2009/10/13(Tue) 14:10

はじめての投稿をさせて頂いたいます。
マンテル・ヘンツェル検定をおこなうことを考えています。
このとき「各層での共通オッズ比を仮定できない」という結果(たとえば,Breslow-Dayの検定が有意)が判明してしまった場合,なぜ層を併合できないと,一般的にいわれているのでしょうか。

マンテル・ヘンツェル検定では,重み付きの併合が行われるかと思います。それぞれの層の情報量も考慮して,オッズ比が異なっていても併合し,総合的な結果を確認したい場合,Breslow-Dayの検定が有意であっても併合することは誤りでしょうか。

No.11052 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【青木繁伸】 2009/10/13(Tue) 14:28

誤りです

共通でないオッズ比を持つ層を併合してしまうと,色々なことが起きます。その一つとして,以下のような例を。
> (x <- array(c(10, 20, 20, 10,  20, 10, 10, 20), dim=c(2, 2, 2)))

, , 1 # 二つの層は,まるで逆のオッズ比を持つという例

[,1] [,2]
[1,] 10 20
[2,] 20 10

, , 2

[,1] [,2]
[1,] 20 10
[2,] 10 20

> fisher.test(x[,,1])

Fisher's Exact Test for Count Data

data: x[, , 1]
p-value = 0.01938
alternative hypothesis: true odds ratio is not equal to 1
95 percent confidence interval:
0.07425094 0.82453011 # 第1層のオッズ比は1より小さい
sample estimates:
odds ratio
0.2563291

> fisher.test(x[,,2])

Fisher's Exact Test for Count Data

data: x[, , 2]
p-value = 0.01938
alternative hypothesis: true odds ratio is not equal to 1
95 percent confidence interval:
1.212812 13.467843 # 第2層のオッズ比は1より大きい
sample estimates:
odds ratio
3.901234

> (m <- apply(x, 1:2, sum))
[,1] [,2] # 2つの層を併合してしまうと,オッズ比は完全に1になってしまう
[1,] 30 30 # まあ,打ち消しあうわけですね
[2,] 30 30
> fisher.test(m)

Fisher's Exact Test for Count Data

data: m
p-value = 1
alternative hypothesis: true odds ratio is not equal to 1
95 percent confidence interval:
0.4598626 2.1745627 # で,有意なオッズ比ではない
sample estimates:
odds ratio
1 # オッズ比の点推定値は 1 !!
こ のようなことは,どの統計量についてもいえること。100人ずつの男女で,ある検査が陽性のものが20%と80%で性別により違いがあるという結果が,両 方一緒にしてみると50%のものが陽性という結果になり,男女で陽性率が違うという情報がなくなってしまう。違うものを一緒にしたらダメ。混ぜるな!危 険!

No.11054 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【dxdt】 2009/10/13(Tue) 18:13

早速のご返信ありがとうございます。
こういった統計の内容を相談できる環境におらず,ご回答頂いたこと,大変ありがたく思います。

もう1点重ね重ねで恐縮ですが,
層別のオッズ比が,「各層での共通オッズ比を仮定できない」場合に,総合的な結果(オッズ比)を得るための方法などは存在するものでしょうか。

No.11055 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【青木繁伸】 2009/10/13(Tue) 18:19

> 「各層での共通オッズ比を仮定できない」場合に,総合的な結果(オッズ比)を得るための方法

いずれにしても,一つの要約値にまとめるのは不可能でしょう。
どの層とどの層が同等とみなしてよいかという分析を通じて,複数の層をまとめて,それぞれの要約値を求めないといけないでしょう。

No.11057 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【dxdt】 2009/10/13(Tue) 19:29

ご回答ありがとうございました。
「各層での共通オッズ比を仮定できない」場合でも,総合的な結果(オッズ比)が得られると便利だと思いましたが,一つの要約値にまとめることは不可能であるとのことで承知いたしました。
今後ともご教授頂ければ幸いです。

No.11061 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【dxdt】 2009/10/14(Wed) 11:53

昨日はご回答ありがとうございました。
ご回答頂いた後に,一点分からない点が出てきました。

例えば,2人から測定値を取得し,一人が-100,もう一人が100という値を得ました。平均値を算出すると0になりますが,この要約値は,個々人の測定値の情報が見えない状態になっています。

一方,「各層での共通オッズ比を仮定できない」場合に,総合的な結果(オッズ比)を求めてしまうと,やはり各層でオッズ比が異なるという情報が無くなってしまいます。

「各 層での共通オッズ比を仮定できない」場合に,総合的な結果(オッズ比)を求めることができないのは,このように各層の情報が無くなってしまうからであると いう考え方からすると,前出の平均を求めることにおいても,個々人の情報が無くなってしまいますので平均を求めてはいけないということになるのでしょう か。(いや,平均を求めてはいけないということはないはずです)
個々の情報が見えなくなってしまうから一つの要約値にまとめることができないとしたときに,普通の平均についてはどのように考えればよいのか分からなくなったため,度々で恐縮ですが,質問させて頂きました。

No.11119 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【dxdt】 2009/10/23(Fri) 18:45

なぜ層を併合してはいけないのかについて,次の事例をもとに実務的な観点から考えてみました。

ある新薬と対照薬の群間比較を行い,男性では新薬の方がよく効き,女性では新薬の方がプラセボよりも劣っていた。確かに,性別を層としたときの各層での共通オッズ比は仮定できないという結果が出た。
層別の結果と,併合後の結果は以下の通り。

<男性> オッズ比:3.0
度数    |有効    |無効    |   合計
--------+--------+--------+
新薬 | 300 | 100 | 400
--------+--------+--------+
対照薬 | 200 | 200 | 400
--------+--------+--------+
合計 500 300 800
<女性> オッズ比:0.6
度数    |有効    |無効    |   合計
--------+--------+--------+
新薬 | 300 | 100 | 400
--------+--------+--------+
対照薬 | 200 | 200 | 400
--------+--------+--------+
合計 500 300 800
<併合に関する統計量>

併合されたオッズ比:1.28(1.04〜1.57)←95%CLが1よりも大きい
Breslow-Day 検定: p < 0.0001
こういった情報があるときに,医師が併合されたオッズ比を見て男性でも女性でも,同様に新薬を投与すると,女性に対しては誤った治療を施すことになってしまう。そのため,併合された結果をもとに判断することは危険です。
このように,得られた情報をもとにアクションを起こす場合には,層ごとに適切なアクションを起こす必要があります。
ここで気になるのは,特にアクションは起こさず,総合的な結果を得るためにはどのようにしたらよいかという点です。

次に,平均の算出に関して,考えてみます。
A,B2人がいて,ある薬剤を投与しました。そして,次の測定値を得ました。
Aさん:100
Bさん:-100
平均:0
値がプラスならば効果あり,マイナスならば悪化していることを表します。

こういった情報がわかっているときに医師が平均値を見て,判断すべきではなく個別の情報をもとに適切な治療を行うというのは当然のことです。オッズ比のときと同様に,得られた情報をもとにアクションを起こす場合には,個人ごとに適切なアクションを起こす必要があります。
ここで,特にアクションを起こさずに,総合的な結果を得るためにはどうしたらよいかと考えると,普通に平均値を求めればよいということになります。
何もアクションを起こさず,ただ単に総合的な結果を得るために平均値は得ることができるのに,なぜオッズ比は総合的な結果を得ることができないのでしょうか?

No.11120 Re: なぜ層の併合ができないのかについて  【青木繁伸】 2009/10/23(Fri) 21:14

提示された例に,誤りがあるのでは?男女とも同じ集計表が示されています。

女のオッズ比は,集計表からは男と同じく3になりますよね。
提示しようとした例は,男のオッズ比が3,女のオッズ比が0.6ということで,統合したら1.28になったということですか。このデータ(表)を統合したらそうなるんですか?
おかしいですね,どういう計算をするのでしょうか。もしそうなるとすれば,女の例数が少ないので,男のデータに引きずられて全体としては1より大きいオッズ比が得られたと言うことに過ぎないでしょう。

あなたが挙げた平均値の例で言えば,男の平均値は 3,女の平均値は -2,男女まとめると平均値は 0.5 になった。だから,まとめれば平均値は正(たとえば,効果あり)でしょう。と言って良いのですか?男には効果ありだが,女には効果なし,と結論するのが普通では?

> 何もアクションを起こさず,ただ単に総合的な結果を得るために平均値は得ることができるのに,なぜオッズ比は総合的な結果を得ることができないのでしょうか?

アクションを起こす起こさないは,分析によって得られるオッズ比が男女で違うかどうか・男女をまとめたオッズ比が同であるかとは無関係でしょう。

男 女別のオッズ比が男女でまるっきり逆方向で,まとめてしまうとオッズ比が1に近くなるということが起きると,それによってアクションを起こすの起こさない の言っているわけではないと言っても,「現象を解釈する」と言うこと自体をアクションだと考えると,「解釈を間違える。誤った認識を持つ」という,とてつ もなく危険なアクションを取るということですよ。

結局のところ,No. 11052 にあげた例と同じ例を挙げようとしたのではないのですか。そして,その結論もNo. 11052 にあげたことを言っているのではないですか?
例を挙げるなら,正確な例とその解釈を挙げ,どこに問題点があるのか正確に指摘して下さい。

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