No.03577 片側検定と両側検定の解釈  【Inamoto】 2007/06/05(Tue) 18:54

少し長くなり,申し訳ありませんが,片側検定と両側検定の解釈について,ご教示いただければ幸いです。

1. 次のような薬剤実験の結果があったとします。

  薬剤の用量       低用量  高用量
  収縮期血圧の平均値(mmHg)  140 120

  この薬剤の用量の変化が血圧に変化を与えたかを分析するために,t検定を両側検定で行う場合,対立仮説は,μ1≠μ2ですが(μ1:低用量の母平均, μ2:高用量の母平均)になると思います。この場合,対立仮説を取り上げた結果を文字通り解釈すれば,「低用量と高用量の違いによって,母集団の血圧の平 均値には差があるといえる」ということになるかと思います。しかし,サンプルにおける平均値の差が140>120となっていることから,論文を書く にあったって,μ1>μ2,つまり「この薬剤は,用量を低から高に増やすことによって,血圧を下げる効果がある」としてはいけないのでしょうか。こ のような記述をする場合には,やはり片側検定を行う必要があるのでしょうか。片側と両側の技術的な意味から考えて,このような解釈を行うことは許されるよ うにも思われるのですが,いかがでしょうか。

2. より実際的には,次のような実験の解釈に悩んでおります。

  薬剤の用量       低用量  中用量  高用量
  収縮期血圧の中央値(mmHg)   140 130 120

  これは,上のものを2群から3群に拡張したもので,サンプルの状況から,ノンパラメトリックの多重比較を行おうとしています。私は,この結果から,薬剤の 用量を低,中,高と増やしていくほど,血圧は下がっていく(つまりμ1>μ2>μ3)という主張をしたいと考えています。この場合,例えば, スティール・ドゥワス法(両側検定)で全群比較を行い,すべての群間で有意になったことをもって,上の主張を行うことはできないのでしょうか。あるいは, 例えば,マン・ホイットニーU検定を片側検定ですべての群間で行い,その結果をボンフェローニ補正した結果,すべての群間で有意であった場合,上の主張は 可能といえるのでしょうか。それとも,どちらでも,上の主張はできるのでしょうか。

 ご教示いただければ幸いです。

No.03578 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【青木繁伸】 2007/06/05(Tue) 19:22

方向性のある対立仮説なら,片側検定を行えば済むことです。
両側検定で差があるという結論は,同じではないということですから,方向性のある結果は最初から目的にしていません。

> μ1>μ2>μ3)という主張

この場合も,対立仮説が明確なのですからそれに最適の検定を行うべきです
ウイリアムズの方法またはシャーリー・ウイリアムズの方法でしょうかね

No.03579 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【Inamoto】 2007/06/06(Wed) 02:11

青木先生 ご教示をありがとうございます。

恐縮ですが,これについて,もう少しご指導いただけますでしょうか。

  薬剤の用量            低用量  中用量  高用量
  収縮期血圧の中央値(mmHg)   140    130    120

上の実験において,μ1>μ2>μ3(μ1:低用量の母平均, μ2:中用量, μ3:高用量)という主張を行いたい場合,先生からは次のご教示をいただきました。

>この場合も,対立仮説が明確なのですからそれに最適の検定を行うべきです
>ウイリアムズの方法またはシャーリー・ウイリアムズの方法でしょうかね

これについて,2つほど,ご指導いただければ幸いに存じます。

1. ウイリアムズの方法またはシャーリー・ウイリアムズの方法は,対照群-処理群の比較する手法かと思いますが,上の実験の分析で,低-中,低-高,中-高の 3つの組み合わせのいずれにおいても差があるといえるかどうかを検討したいと考えております(説明不足で申し訳ありません)。ウイリアムズの方法または シャーリー・ウイリアムズの方法では,対立仮説:μ1>=μ2>=μ3(ただし,少なくとも1つは, >)とし,対立仮説が取り上げられる場合には,少なくとも,μ1>μp(p=2または3)ということになるので,μ2>μ3は検討でき ないと理解しておりますが,いかがでしょうか。

2. 最初の質問の繰り返しになり,恐縮ですが,「低-中,低-高,中-高のすべてについて,マン・ホイットニーU検定の片側検定を行い,その結果をボンフェ ローニ補正で評価し(この方法がきわめて保守的になりやすいという問題があるにしても),すべての群間で有意であった場合に,μ1>μ2> μ3である」ということはいえないのでしょうか。また,このやり方に問題がある場合には,適切な方法をご教示いただければ幸甚です。

お手数をおかけしますが,よろしくお願いいたします。

No.03580 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【青木繁伸】 2007/06/06(Wed) 10:14

対照群というと「何も処置をしない群」というのが普通かも知れないが,「基準とする群」ということだから,低用量群を基準群にしてもよいと思います。

> マン・ホイットニーU検定の片側検定を行い,その結果をボンフェローニ補正

そう言うことなら,何もボンフェローニなど持ち出さなくても,ペリの方法で片側検定を行えばよいのでは?

No.03582 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【Inamoto】 2007/06/06(Wed) 14:45

ご指導をありがとうございます。たびたび申し訳ありませんが,もう少し質問させてください。

 1. 上の実験で,中用量と高用量の間の検定も行いたいのですが,対照群では,低-中,低-高のみで,中-高はできないのではないでしょうか。

 2. >そう言うことなら,何もボンフェローニなど持ち出さなくても,ペリの方法で片側検定を行えばよいのでは?

 勉強不足で,ペリの方法については知識がないのですが,マン・ホイットニーU検定+ボンフェローニ補正という方法は使わないほうがよろしいのでしょうか。(しつこくて申し訳ありません)。

No.03583 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【青木繁伸】 2007/06/06(Wed) 15:35

> 対照群では,低-中,低-高のみで,中-高はできないのではないでしょうか。

なので,ペリの方法を提案してみました

> 勉強不足で,ペリの方法については知識がないのですが

ここにももう数十回紹介されている,永田らの本をお勉強してください

> マン・ホイットニーU検定+ボンフェローニ補正という方法は使わないほうがよろしいのでしょうか

それぞれの方法を理解して,自分で判断しましょう。

No.03590 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【Inamoto】 2007/06/07(Thu) 00:20

青木先生

いろいろご指導ありがとうございます。

私の不注意で,ペリの方法について,永田先生らの本に記述されているのを気づいておりませんでした。

少し勉強させていただきます。

No.03602 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【太郎】 2007/06/08(Fri) 10:31

 ノンパラメトリック検定では,この場合,まず jonckeereの検定で傾向のある対立仮説の検定を行い,そ れで有意であれば, wilcoxonの順位和検定(片側検定)で個別の比較を行います。今回のケースは3水準ですから,有意水準の補正は必要ありません。4水準以上になると 必要になりますが,補正の方法は,永田らを参照すればよいでしょう。上記2つの検定方法はノンパラメトリック検定のテキストには,たいてい取り上げられて います。

 次に,パラメトリック検定の場合ですが,Bartholomewの方法とHayterの方法が一般的だと思います。
 ただし,Hayterの方法は,日本語で解説されている文献があるかどうかはわかりませんが,下記のものがあります。

・Hayter A. J. 1990. A one-sided studentized range test for testing against a simple ordered alternative. Journal of the American Statistical Association.85: 778〜785

 Bartholomewの方法は,いくつかの日本語文献があ りますが,下記には,エクセルのマクロプログラムが掲載されているので,使いやすいかと思います。農業関係の研究者をご存じであれば,入手は簡単です。ご 存じなければ,出版元または著者に問い合わせてもいいかと思います

 高橋幸男.2002. 処理間に順序のある実験データを解析するための一手法 − Bartholomew 検定とその応用−. 農業および園芸(養賢堂). 77(5):587-593

No.03613 Re: 片側検定と両側検定の解釈  【Inamoto】 2007/06/09(Sat) 02:19

太郎 様

丁寧なご教示をありがとうございます。ご教示いただいた文献などを参考にして,ご指導いただいた方法について,勉強させていただきます。

青木先生と太郎様のおかけげで,かなり具体的に用いるべき方法が理解できてきました。

深くお礼申し上げます。

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