No.00062 疫学と一般的な統計学の違い  【生態学出身】 2006/05/13(Sat) 22:41

疫学の論文をよく読むが,一般的な統計処理とは異なるのでようわからん。たとえば,アルコールの摂取量と肥 満との関連を調べるのに,摂取量とBMIを線形回帰で関係を求める。そのうえ,摂取量によって群わけして,まったく摂取しない群と週2−3回,毎日飲む群 というように平均値やBMI>25以上の肥満者の比率を比較する,くらいが,一般的な統計学の教科書に載ってる方法でなかろうか。しかし,疫学の論 文にはロジスティックやCOX何とかモデルで検定してるものが多い。しかし,罹患率や死亡率のように1万人中数十人という低い割合なら,オッズ比を比較す るのはいいと思うが,10−30%のものに,使うのはどうだろうか?
 それと,非飲酒者と飲酒者のBMIを比較するのに,肥満に与える食事以外の 交絡因子,運動,遺伝,学歴,経済状況などを考える必要があるのだろうか?千人規模の調査が必要があるのは,このような因子をランダムにそれぞれの群に振 り分けるためではなかろうか?おまけに,運動しないから肥満になったのか,肥満の人が少しでも減量するために,運動をしているのかは不明である。

誰か教えてください。

No.00069 Re: 疫学と一般的な統計学の違い  【sb】 06/05/14(Sun) 16:11

> しかし,疫学の論文にはロジスティックやCOX何とかモデルで検定してるものが多い。

これは,交絡因子を調整するため。

> しかし,罹患率や死亡率のように1万人中数十人という低い割合なら,オッズ比を比較するのはいいと思うが,10−30%のものに,使うのはどうだろうか?

オッズ比が相対危険度のよい推定値になるのは,事象が稀な場合。10~30%の場合,その乖離は,大きくなる(オッズ比は,帰無仮説より遠い方向へずれる)。従って,この指摘は,もっともである。


> 食事以外の交絡因子,運動,遺伝,学歴,経済状況などを考える必要があるのだろうか?

ある。
疫 学データは,基本的に観察科学より得られる。従って,交絡因子の影響を大きく受けてしまう可能性がある。上記因子は,先行研究等より,交絡因子である可能 性がある。もし,当該のデータセットで,関連がない場合でも,”ない”と云うことを積極的に主張するために,解析に入れることが多い。特に疫学の場合,交 絡因子を幅広く取ることが多い。

> 千人規模の調査が必要があるのは,このような因子をランダムにそれぞれの群に振り分けるためではなかろうか?

臨床”実験”が許されるのであれば,もっと少ない症例数で信頼性の高い結果が得られるだろうが,,,。動物を相手にするか,ヒトを相手にするかの違い。

> おまけに,運動しないから肥満になったのか,肥満の人が少しでも減量するために,運動をしているのかは不明である。

そういう曖昧な解釈が出来ないように,study designを工夫しましょう。

No.00070 ランダムサンプリング  【生態学出身】 06/05/14(Sun) 17:34

sbさん

貴重なご意見ありがとうございました。専門家ですね。

ところでもう少しお伺いしたいことがあります。

げ んざい,健康診断時に食事調査を行って,そのデータを解析しています。ですから,運動不足によって肥満になったのか,肥満解消に運動をしているのかわから ないのです。それと,アルコール(ご飯でも牛乳でもよいが)の摂取量によって,グループ化しているので,運動の習慣などのBMIに影響を与える交絡因子 は,それぞれの群にランダムに振り分けられるはずです。そのために,大サンプルが必要なのでは?もし,得られた結果の有意差が交絡因子によるものならば, それはランダムサンプリングが行われていないということになります。

sbさんの立場は主流な疫学研究者の手法だと思います。逆に,分子疫学の論文は,交絡因子はまったく考えず,少しの遺伝子の違いでことをかたずけようとするものです。

No.00071 Re: 疫学と一般的な統計学の違い  【sb】 06/05/14(Sun) 19:00

> ですから,運動不足によって肥満になったのか,肥満解消に運動をしているのかわからないのです。

横断研究では,時間軸が潰れて原因と結果がごちゃまぜになっていますから仕方がないですね。他のstudy designを採用しましょう。

> それと,アルコール(ご飯でも牛乳でもよいが)の摂取量によって,グループ化しているので,運動の習慣などのBMIに影響を与える交絡因子は,それぞれの群にランダムに振り分けられるはずです。

それは,間違っています。
無作為抽出の概念と無作為割付の概念とが混乱している印象です。

分 子疫学は,全くの門外漢ですが,,,。もし,肥満に関する遺伝子(1つあるいは非常に少数)が特定されており,その遺伝子の有無により,肥満の有無のオッ ズ比を求めたとすると,普通の疫学では,考えられない程,大きなオッズ比になるのでは,ないかと思いますし,また,既知の交絡因子で調整しても,そのオッ ズ比には,大きな影響を与えないものと予測しますが,実際の所,如何でしょうか?

No.00073 Re: 疫学と一般的な統計学の違い  【生態学出身】 06/05/15(Mon) 08:14

おそらく,15年前くらいの論文では私がいう方法が,用いられています。しかし,最近の論文では,BMIに与える影響を調節した論文がほとんどです。

と ころで,わたしがsbさんの意見に納得できないところ,あるいはもう少し説明していただきたいところは,BMIにあたえる交絡因子たとえば,運動の習慣が ある人ない人が,酒を飲まない人と飲む人のグループにランダムに振る分けられる(混入する)のではないかということです。

それと,最近流 行の分子疫学ですが,肥満と遺伝子もひとつの流行です。血友病や色盲など,ひとつの遺伝子の違いによって,形質が決定する場合ははっきりしますが,肥満な どさまざまな要素によって形質が決定する場合,それぞれの遺伝子の働きはよわく,遺伝子多型といいます (Single nucleotide polymorphism, SNPs)。しかし,その影響は,せいぜい,オッズ比で0.8-1.3くらいです。ほとんどの論文が,食事,身体活動など環境要因についてはまったく触れ ていません。

No.00074 Re: 疫学と一般的な統計学の違い  【sb】 06/05/15(Mon) 19:02

> 運動の習慣がある人ない人が,酒を飲まない人と飲む人のグループにランダムに振る分けられる(混入する)のではないかということです。

無作為抽出と無作為割付をお調べ下さい。

> しかし,その影響は,せいぜい,オッズ比で0.8-1.3くらいです。

私でしたら,”相関は認められなかった”と報告するでしょう。

No.00077 Re: 疫学と一般的な統計学の違い  【生態学出身】 06/05/16(Tue) 10:54

Sb さん

私の意見が間違っているとは思わないんですけど,母集団の信頼性という観点からは,交絡因子を調整したほうが,よいと思われます。貴重なアドバイスありがとうございました。

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