★ 偏りのある標本の生存率解析 ★

3076. 偏りのある標本の生存率解析 風雲デイブ 2004/05/06 (木) 16:05
└3094. Re: 偏りのある標本の生存率解析 薬剤評価者 2004/05/07 (金) 22:07
 └3097. Re^2: 偏りのある標本の生存率解析 風雲デイブ 2004/05/08 (土) 01:34


3076. 偏りのある標本の生存率解析 風雲デイブ  2004/05/06 (木) 16:05
ある早期癌のリンパ節転移の有無を,癌組織の遺伝子変化を調べることで予測する臨床研究です。
リンパ節転移 N(+) の頻度は10%程度しかないので,有意差を出しやすくするため,全体からの無作為抽出ではなく,N(+) 50症例,N(-) 50症例を集めて,遺伝子変化の有無を調べました。
2x2分割表にすると,めでたく Fisher's exact test で有意差がでました。
また,癌の組織型などの変数を説明変数に追加してロジスティックモデルでも遺伝子変化の有無の関連を認めました。

ここからよくわからないので教えていただけると幸いです。

さて,その遺伝子変化はリンパ節転移に強く関わっていることが明らかとなりました。
リンパ節転移の有無は予後と強く関連していることが以前から知られています。
従って,この遺伝子変化をグループ変数として生存率の差を調べたくなりました。
しかし,症例の集め方に偏りがあるので,解析が可能かどうかわかりません。
通常の Kaplan-Meier を適用できるのか,それとも説明変数に N(+)/N(-) を含めた Multivariate Cox を適用すればよいのか,それともそもそもこのような標本に対しては生存率解析はできないのか。

どうかご教授ください。

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3094. Re: 偏りのある標本の生存率解析 薬剤評価者  2004/05/07 (金) 22:07
> ある早期癌のリンパ節転移の有無を,癌組織の遺伝子変化を調べることで予測する臨床研究です。
> リンパ節転移 N(+) の頻度は10%程度しかないので....N(+) 50症例,N(-) 50症例を集めて....

患者背景(性,年齢,癌の最大径,組織型,癌発見後期間など)マッチングをかけましたか?

> 2x2分割表にすると,めでたく Fisher's exact test で有意差がでました。
単純に,進行した癌において,突然変異が生じているというという,結果で結果を評価しているような気がするのですが…..

> 通常の Kaplan-Meier を適用できるのか,それとも説明変数に N(+)/N(-) を含めた Multivariate Cox を適用すればよいのか,それともそもそもこのような標本に対しては生存率解析はできないのか。

数値計算ということであれば,なんでもできます。以下は,私ならこうするという感想で…..(参考にもならないかもしれませんが)。

<ステップ1:リンパ節転移と突然変異との関係について>
年齢,罹病期間,癌の組織型,進行度(早期といっても状況は大きく異なるはずですので腫瘍の最長径や体積など)などいろいろな因子が,リンパ節転移および突然変異いずれにも重要な影響を与えていると考えられるので,case-control studyにするにしても,これらの因子をcaseとcontrolでマッチングさせる必要があります(50例の選択法に工夫が必要であるということ)。またすべての症例を用いてlogistic分析することも選択肢に入ってくるでしょう。
これらの方法により,リンパ節転移に影響するする突然変異以外の因子を除外する,または数理的に調整した上で,突然変異がリンパ節転移に与える影響を評価します。

<ステップ2:突然変異が生存期間に与える影響について>
ステップ1のマッチングが完全だという保証があれば,case-controlのデータから突然変異の有無により,カプランマイヤー法により生存曲線を算出し,logrank検定などで2群間の差を考察してもよいのかもしれません。2群間の背景が大きく異なれば,そのまま比較は難しいのではないでしょうか。モデルがうまく作成できること,ハザード比が一定であることが前提ですが,生存期間に影響を与える因子(性,年齢,進行度,リンパ節および他の臓器への転移の有無など)を共変量に用いたCox比例ハザードモデルを用いて,お持ちのデータすべて(case-control以外を含む)を分析すればよいと思います。

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3097. Re^2: 偏りのある標本の生存率解析 風雲デイブ  2004/05/08 (土) 01:34
背景のマッチングはかけています。
そうですか,マッチングが取れていればKaplan-Meierも可能ですか。
Multivariate Cox も両方適用できると知って安心しました。
N(-)症例のみで解析する羽目になるかと心配しました。
ありがとうございました。

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