★ 横断調査のロジスティック解析について ★

 251 横断調査のロジスティック解析について  はな  2003/04/06 (日) 22:23
  252 Re: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 10:06
   253 Re^2: 横断調査のロジスティック解析について  社会科学者  2003/04/07 (月) 17:04
    254 Re^3: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 18:00
     255 Re^4: 横断調査のロジスティック解析について  社会学者ではなく  2003/04/07 (月) 18:23
      256 Re^5: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 19:22
       257 Re^6: 横断調査のロジスティック解析について  はな  2003/04/08 (火) 03:39
        258 Re^7: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/08 (火) 06:03
         259 Re^8: 横断調査のロジスティック解析について(1)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:27
          260 Re^9: 横断調査のロジスティック解析について(2)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:30
           261 Re^10: 横断調査のロジスティック解析について(3)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:35
            262 Re^11: 横断調査のロジスティック解析について(3)  はな  2003/04/08 (火) 15:27


251. 横断調査のロジスティック解析について  はな  2003/04/06 (日) 22:23
初めまして。
疫学,統計学ともに初心者で,自分の解析方法が正しいかどうか悩んでいます。
地域で転倒の有無と諸要因(薬の服薬など)との関連についての横断調査を行い,今後,転倒の有無について追跡していく予定です。そこで,まずは横断調査の結果を解析することとなり,転倒者の特性はカイ二乗で,転倒ありと諸要因の解析をロジスティック回帰分析する予定ですが,貴HPの解説によれば,ロジスティック解析は追跡調査の解析に用いるものであって,横断調査の解析では用いるべきではないのでしょうか?それともそれは「多重」ロジスティックについてのみのお話なのでしょうか?過去ログを検索して,社会科学系の方はOKということでしたが,どうなのでしょうか。教えていただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。

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252. Re: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 10:06
> 貴HPの解説によれば,ロジスティック解析は追跡調査の解析に用いるものであって,横断調査の解析では用いるべきではないのでしょうか?それともそれは「多重」ロジスティックについてのみのお話なのでしょうか?過去ログを検索して,社会科学系の方はOKということでしたが,どうなのでしょうか。

あるエンドポイントに注目して,その原因を探るとき,危険要因に曝露される期間が調査対象ごとにいろいろ違っていると困ると思いませんか?
例えばの話ですが,60歳を越えると転倒の危険性が大きくなるとして,では61歳の人と80歳の人を同じ土俵で比較できるでしょうか。両者とも転倒を引き起こすある要因を持っていたとしても,実際に1年間に転倒が起きる可能性と20年間に転倒が起きる可能性を比べると,後者は20倍もっともらしいと思いますがいかがでしょう。

社会学系では,危険曝露期間という考え方がないためでしょうね。
会社の倒産というのをエンドポイントにして,会社設立から倒産までの生存率解析をするというような場合には,人の生死と全く同じなんですけどね。

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253. Re^2: 横断調査のロジスティック解析について  社会科学者  2003/04/07 (月) 17:04
青木先生いつもお世話になっております。

> > 貴HPの解説によれば,ロジスティック解析は追跡調査の解析に用いるもので

解析手法はあくまでも解析手法であって,仮説と(仮説に応じた)研究デザインとは別の次元の話だとおもいます。

分野をとわず,cross-sectional dataに対してロジスティック回帰はよく使われていると思います。

> あるエンドポイントに注目して,その原因を探るとき,危険要因に曝露される期間が調査対象ごとにいろいろ違っていると困ると思いませんか?

ですから,ロジスティック回帰で年齢でコントロールしたりするのではないでしょうか?

> 例えばの話ですが,60歳を越えると転倒の危険性が大きくなるとして,では61

あまりいいたとえではないとおもいます。

> 社会学系では,危険曝露期間という考え方がないためでしょうね。

社会学者に怒られるのではないでしょうか?

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254. Re^3: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 18:00
いろいろ,言葉が足りないところは謝っておきます。

> 分野をとわず,cross-sectional dataに対してロジスティック回帰はよく使われていると思います。

よく使われているのと,適切に使われているのは別だと思います。

> > あるエンドポイントに注目して,その原因を探るとき,危険要因に曝露される期間が調査対象ごとにいろいろ違っていると困ると思いませんか?
>
> ですから,ロジスティック回帰で年齢でコントロールしたりするのではないでしょうか?


挙げた例は,エンドポイントが年齢と密接に連携するものでしたので,確かにいい例ではなかったですね。認めます。

年齢にあんまり影響されないようなものであって,ある人は観察期間が10年,別の人は1年というのは,一緒に解析できませんね?ということが言いたかったのです。面倒だから,対象者は全員同じ年齢であるという制約条件を付けてもいいです。

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255. Re^4: 横断調査のロジスティック解析について  社会学者ではなく  2003/04/07 (月) 18:23
> よく使われているのと,適切に使われているのは別だと思います。

おっしゃる通りだとおもいます。適切かどうかは仮説しだいです。

>対象者は全員同じ年齢であるという制約条件を付け

横断調査であっても,過去1年のeventの有無などのように,過去の一定期間でのeventのあるなしがアウトカムであれば,青木先生のおっしゃる危険曝露期間も同じですから,さまざまな年齢の集団でも ロジスティック回帰で年齢をコントロールした分析はValidだと思います。

もちろんその期間中に死亡した人が抜けてしまうバイアスやeventと独立変数の時間的関係に問題がでてきますが,,,

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256. Re^5: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/07 (月) 19:22
> 横断調査であっても,過去1年のeventの有無などのように,過去の一定期間でのeventのあるなしがアウトカムであれば,

これが,「危険曝露期間の限定」なのです。
医学領域では,手術とか入院とか診断確定日など危険曝露の開始が明確で,イベントの発生日時も,観察期間も明確なのです。

「自然科学の統計学」,東大出版会
で取り上げられている例では
現住所と大学の間の距離と,大学キャンパス内に住む比率のデータ
薬物の投与水準に基づく生物の死亡率
などは,時間が関与しないのでプロビットモデルもロジットモデルも何の問題もないのです。
(後者の例は,急性影響を対象にしているので,投与後に死亡するまでの時間は本来無関係。短時間の後の生死を確認するだけ。しかし,ガンの発現など慢性影響を評価するなら,投与後の観察日数がバラバラなんて言うことはない。一年後にガンが発現したかどうかが重要。その解析結果と,同じ対象の観察を続けて五年後の予後の解析結果は同じではない(あたりまえ)

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257. Re^6: 横断調査のロジスティック解析について  はな  2003/04/08 (火) 03:39
青木先生,社会科学者様
お忙しいところ,ご回答賜りありがとうございます。

> > 横断調査であっても,過去1年のeventの有無などのように,過去の一定期間でのeventのあるなしがアウトカムであれば,
> これが,「危険曝露期間の限定」なのです。

私が扱うデータはまさに過去の一定期間のeventの有無と諸要因の関係をみたいので,とりあえずはロジスティック解析可と理解してよろしいでしょうか。

横断調査解析←ロジスティック解析可,多重ロジスティック解析不可
前向き調査解析←多重ロジスティック解析可
という理解でよろしいでしょうか?

というのは,prospective studyの論文で,ロジスティックで危険度算出,そこで有意だったものについて multiple logistic regressionで予測因子(危険因子)を検討というのをよく見かけますが,cross-sectionalでこれと同じようにしているものを見つけ,混乱しているのです。ありなんでしょうか?

私の理解がスムーズでなく同じことを何度もお伺いし,先生方には大変申し訳ございませんが,いまいちど確認させてください。よろしくお願いいたします。

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258. Re^7: 横断調査のロジスティック解析について  青木繁伸  2003/04/08 (火) 06:03
> 私が扱うデータはまさに過去の一定期間のeventの有無と諸要因の関係をみたいので,とりあえずはロジスティック解析可と理解してよろしいでしょうか。

よろしいでしょう。

> 横断調査解析←ロジスティック解析可,多重ロジスティック解析不可
> 前向き調査解析←多重ロジスティック解析可
> という理解でよろしいでしょうか?

多重ロジスティック解析は説明変数(独立変数)が複数の場合のロジスティック解析なので,「横断調査解析←ロジスティック解析可,多重ロジスティック解析不可」というような区別はありません。前向き調査解析であっても,(単純な)ロジスティック解析だってありえます(普通は,一要因だけで説明できる場合が少ないだけでしょう)。

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259. Re^8: 横断調査のロジスティック解析について(1)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:27
Study design と 2X2分割表
          疾病(あるいはイベント)
  曝露      あり  無し  合計
    ------------------------------------
    あり      a       b      m0
    無し      c       d      m1
    ------------------------------------
                    n0      n1     N

    横断研究:N(一定)
  事例対照研究:n0(一定),n1(一定)
  コホート研究:m0 (一定),m1(一定)

  2X2分割表がコホート研究から得られた場合:
   絶対危険度(曝露あり群)= a/m0
      絶対危険度(曝露無し群)= c/m1
      相対危険度 = (a/m0)/(c/m1)

    曝露と疾病の”危険度”を表す最も直観的で優れた指標は,相対危険度である。
  しかし,2X2分割表が事例対照研究,あるいは,横断研究で得られたもので
  あれば,(a/m0)/(c/m1)は,意味をなさず,相対危険度は,計算が出来ない。
  事例対照研究,横断研究からは,オッズ比(ad/bc)は,計算可能

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260. Re^9: 横断調査のロジスティック解析について(2)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:30
オッズ比とロジスティック回帰分析
  疾病あるいはイベントの確率をY軸に,曝露をx軸にとると,S字型(曝露が強ければ,強いほど疾病・イベント確率が高くなる)の関係になることが多い。この場合,適当な変換を施すことにより疾病・イベント関係を線形化可能の場合がある。経験的に,logit変換,complimentary log-log変換,probit変換を施すことにより,うまく線形化出来る。
  logit変換(ロジスティク回帰)が繁用されるのは,モデルから推定される回帰係数が,対数をとったオッズ比と解釈される,その解釈の容易さである。また,多変量版のロジスティック回帰分析(多重ロジステック回帰分析)に拡張するのは,極めて容易である。

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261. Re^10: 横断調査のロジスティック解析について(3)  sb812109  2003/04/08 (火) 07:35
まとめ
  (1)曝露と疾病の危険度を最もよく示す指標は,相対危険度である。
  (2)相対危険度は,コホート研究でしか,直截計算は,出来ない。
  (3)オッズ比は,Study designに関わらず,計算可能。また,オッズ比は,
     疾病・イベントがまれな場合,相対危険度とほぼ等しくなる。
  (4)ロジスティック回帰分析により推定される回帰係数は,対数をとった
     オッズ比と解釈され,またタ変慮に拡張するのも容易であるので,よく
     用いられる。
Study design 補足
   コホート研究は,2つに分けることが出来る
   (1)Concurrent Cohort Study
現時点を起点に将来に亘って,新規発症例,交絡因子を収集
      多大な研究費,及び研究者の長寿を前提とする。現実的に極めて困難。
(2)Non-concurrent Cohort Study
過去の1時点を起点に現在に向かってデータ収集
      研究費は,些少。また,短期間で終了する事が可能。ただし,潜在的な
      交絡因子に関するデータの収集が,幸運にもなされていれば。

まずは,疫学の入門書を1冊(薄い本で十分)をお薦めします。

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262. Re^11: 横断調査のロジスティック解析について(3)  はな  2003/04/08 (火) 15:27
青木先生,sb812109 さま

懇切丁寧なご指導を賜り,心より感謝いたします。ありがとうございました。
疫学は少し勉強(本を読んだり)したつもりでしたが,実際のデータを動かすとなると,またデザインを組むとなると,立ち往生してしまいます。
統計も疫学も少しずつ学習したいと思います。
つきましては,厚かましいお願いではございますが,ロジスティック解析など多変量解析についてかなり初歩から自己学習するのに適した良書をお薦めいただけましたら幸いに存じます。

これからも初歩的な質問などでお世話になることがあると思いますが,どうぞよろしくお願いいたします。

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