このような場合に,簡単な検定のやり方として「前後の差を取ったデータについて,対応のない平均値の差の検定をすればよい」と答えてきたが,正確性に欠けるので補足しておく。
データ例
A1とA2は対応がない(別の被検者)
B1とB2は対応がある(同じ被検者に二回測定)
条件A1における二回の測定値 B1 B2 差(後で使用) 3 4 −1 3 3 0 1 4 −3 3 5 −2 5 7 −2 条件A2における二回の測定値 B1 B2 差(後で使用) 5 3 2 7 5 2 8 2 6 7 4 3 9 6 3 このデータに対して ASB タイプの2要因分散分析を行うと SS df MS F P 主効果A 16.2 1 16.2 4.63 0.064 誤差S(A) 28.0 8 3.5 NA NA 主効果B 3.2 1 3.2 3.20 0.111 交互作用A×B 28.8 1 28.8 28.80 0.0006723642 誤差 8.0 8 1.0 NA NA 差のデータについて,対応のない2群(A1,A2)の平均値の差の検定(両側検定)を行うと, t = 5.3666, df = 8, p-value = 0.0006724 となる。ただしこれは,二群が等分散であると仮定したときのものである。
すなわち,後者のt検定の結果は,ASBタイプの検定では「交互作用A×B」についての結果と同じになるのである。
それぞれの効果について検定が必要ならば,ASBタイプの2要因分散分析を行わねばならない。
しかし,差のデータが二群間で等分散であるかどうかの保証がないとすれば,差のデータのt検定を行うときには Welch の方法をとるという方策があるが,ASBタイプの検定を行うとするとそのオプションは用意されていない。