標本抽出法     Last modified: May 16, 2002

 標本を抽出する際に,母集団の代表と思われる標本を主観的に選択抽出する 有意抽出法 が使われていた時代がある。しかし,このようにして得られた標本には偏り(バイアス)があり,誤差の評価において統計学的な取り扱いが不可能となることがある。

 それに代わるものとして,無作為抽出法 がある。母集団から抽出された標本が次の条件を満たすとき,この標本を 確率標本 という(無作為標本,あるいは,ランダム・サンプルともいう)。

単純無作為抽出法

 $N$ 個からなる有限母集団から $n$ 個の標本を無作為に抽出するのは次のように行う。

  1. 母集団の構成要素の全てに通し番号をつける。
  2. $N$ 個の番号から $n$ 個の番号を無作為にひく。
  3. 抽出番号にあたる標本を実際に調査する。

 ここで,$N$ 個からなる有限母集団から $n$ 個の標本を無作為に抽出するしかたは ${}_{N}C_{n} 通りあるが,作意や主観など人為的要素の混入を防ぐために以下のような方法がある。

系統抽出法

 母集団の全構成要素に通し番号をつける。はじめの一つの標本だけは乱数表などでランダムに選ぶ。それ以降の標本はこの数字から始めて一定間隔で抽出する。

 滅多にないことではあるが,番号の付け方に一定の周期性があるときには偏りが生じるので注意が必要である。

多段抽出法

 全国規模の大がかりな調査では,前述のような抽出法は作業量が膨大なものになる。そこでまず,市町村を抽出単位として無作為抽出する。つぎに選ばれた市町村の中でそれぞれ前述の方法で個体を抽出する。

 抽出は何段階でもよい。例えば,最初に都道府県を抽出し,市町村を抽出し,地区を抽出し,その後で個体を抽出するなど。

層別抽出法

 ある都市の医師の意識調査をする場合を考えよう。標本を無作為に抽出した場合,母集団の構成(診療科,開業医・勤務医)がそのまま標本に反映するとは限らない。抽出に先立って,医師を診療科別,開業医・勤務医別などのような等質のグループに分け,それぞれのグループから標本を抽出する方法である。このときの,等質な各グループを ,層に分けることを 層別化 という。

 層別抽出法には 最適割当法比例割当法 がある。よく用いられるのは比例割当法であり,必要な標本の大きさを $n$,各層の大きさを $N_{i}\ ( i = 1, 2, \dots , k )$,母集団の大きさを $N$ としたとき,各層から抽出する標本の大きさ $n_i$ は,$n_i = \displaystyle \frac{n \cdot N_{i}}{N}$となる。


演習問題


応用問題


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