標準化と標準化得点     Last modified: May 16, 2002

 母平均 $\mu$,母分散 $\sigma^{2}$ である正規分布は, \[ f(x) = \frac{1}{\sqrt{2\ \pi}\ \sigma} \ \exp \left \{- \frac{(x-\mu)^2}{2\ \sigma^2} \right \} \] で表され,$\mathcal{N} ( \mu, \sigma^{2} )$ と表現する。

 このとき,変数変換 \[ Z = \frac{X-\mu}{\sigma} \] を $X$ の標準化,また $Z$ を標準化得点と呼ぶ。

 $Z = z$ とおくと,$z$ は \[ f(z) = \frac{1}{\sqrt{2\ \pi}}\ \exp \left ( -\frac{z^2}{2} \right ) \] に従う。この分布は標準正規分布と呼ばれるもので,母平均が $0$,母分散が $1$ となるので,$\mathcal{N} ( 0, 1 )$ と表現する。

 さらに,原点からの累積密度関数 $\Phi ( z )$ を \[ \Phi(z) = \int_0^z\ f(z) \ dx \] と定義する(場合によっては $\Phi ( z )$ という記法で $-\infty$ からの累積密度関数すなわち $F ( z )$ を表すこともあるので注意)。これを,表 1 に示す。

 累積密度関数 $\Phi ( z )$ と分布関数 $F ( z )$ の間には, \[ F(z) = \left \{ \begin{array}{ll} 0.5+\Phi(z), & z \geqq 0 \\ 0.5-\Phi(z), & z \lt 0 \end{array} \right . \] の関係がある。

 また,$f ( z )$ と $\Phi ( z )$ の性質として,以下のものが挙げられる。

  1. 原点に関して対称。すなわち,$f ( z ) = f ( - z )$

  2. $\Pr\{ - a \leqq Z \leqq a\} = 2 \Pr\{0 \leqq Z \leqq a\} = 2 \Phi ( a )$

  3. $\Phi ( \infty ) = 0.5$,$\Phi ( 0 ) = 0$

  4. $a \geqq b \geqq 0$ のとき,$\Phi ( a ) \geqq \Phi ( b )$

  5. $a \geqq b \geqq 0$ のとき,$\Pr\{b \leqq Z \leqq a\} = \Phi\{a\} - \Phi\{b\}$

  6. $\Pr\{Z \geqq a\} = 0.5 - \Phi ( a )$

表 1.標準正規確率表 $Z$ に対する原点からの累積確率を求める表
$Z$ 0.00 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.09
0.0 0.0000 0.0040 0.0080 0.0120 0.0160 0.0199 0.0239 0.0279 0.0319 0.0359
0.1 0.0398 0.0438 0.0478 0.0517 0.0557 0.0596 0.0636 0.0675 0.0714 0.0753
0.2 0.0793 0.0832 0.0871 0.0910 0.0948 0.0987 0.1026 0.1064 0.1103 0.1141
0.3 0.1179 0.1217 0.1255 0.1293 0.1331 0.1368 0.1406 0.1443 0.1480 0.1517
0.4 0.1554 0.1591 0.1628 0.1664 0.1700 0.1736 0.1772 0.1808 0.1844 0.1879
0.5 0.1915 0.1950 0.1985 0.2019 0.2054 0.2088 0.2123 0.2157 0.2190 0.2224
0.6 0.2257 0.2291 0.2324 0.2357 0.2389 0.2422 0.2454 0.2486 0.2517 0.2549
0.7 0.2580 0.2611 0.2642 0.2673 0.2704 0.2734 0.2764 0.2794 0.2823 0.2852
0.8 0.2881 0.2910 0.2939 0.2967 0.2995 0.3023 0.3051 0.3078 0.3106 0.3133
0.9 0.3159 0.3186 0.3212 0.3238 0.3264 0.3289 0.3315 0.3340 0.3365 0.3389
1.0 0.3413 0.3438 0.3461 0.3485 0.3508 0.3531 0.3554 0.3577 0.3599 0.3621
1.1 0.3643 0.3665 0.3686 0.3708 0.3729 0.3749 0.3770 0.3790 0.3810 0.3830
1.2 0.3849 0.3869 0.3888 0.3907 0.3925 0.3944 0.3962 0.3980 0.3997 0.4015
1.3 0.4032 0.4049 0.4066 0.4082 0.4099 0.4115 0.4131 0.4147 0.4162 0.4177
1.4 0.4192 0.4207 0.4222 0.4236 0.4251 0.4265 0.4279 0.4292 0.4306 0.4319
1.5 0.4332 0.4345 0.4357 0.4370 0.4382 0.4394 0.4406 0.4418 0.4429 0.4441
1.6 0.4452 0.4463 0.4474 0.4484 0.4495 0.4505 0.4515 0.4525 0.4535 0.4545
1.7 0.4554 0.4564 0.4573 0.4582 0.4591 0.4599 0.4608 0.4616 0.4625 0.4633
1.8 0.4641 0.4649 0.4656 0.4664 0.4671 0.4678 0.4686 0.4693 0.4699 0.4706
1.9 0.4713 0.4719 0.4726 0.4732 0.4738 0.4744 0.4750 0.4756 0.4761 0.4767
2.0 0.4772 0.4778 0.4783 0.4788 0.4793 0.4798 0.4803 0.4808 0.4812 0.4817
2.1 0.4821 0.4826 0.4830 0.4834 0.4838 0.4842 0.4846 0.4850 0.4854 0.4857
2.2 0.4861 0.4864 0.4868 0.4871 0.4875 0.4878 0.4881 0.4884 0.4887 0.4890
2.3 0.4893 0.4896 0.4898 0.4901 0.4904 0.4906 0.4909 0.4911 0.4913 0.4916
2.4 0.4918 0.4920 0.4922 0.4925 0.4927 0.4929 0.4931 0.4932 0.4934 0.4936
2.5 0.4938 0.4940 0.4941 0.4943 0.4945 0.4946 0.4948 0.4949 0.4951 0.4952
2.6 0.4953 0.4955 0.4956 0.4957 0.4959 0.4960 0.4961 0.4962 0.4963 0.4964
2.7 0.4965 0.4966 0.4967 0.4968 0.4969 0.4970 0.4971 0.4972 0.4973 0.4974
2.8 0.4974 0.4975 0.4976 0.4977 0.4977 0.4978 0.4979 0.4979 0.4980 0.4981
2.9 0.4981 0.4982 0.4982 0.4983 0.4984 0.4984 0.4985 0.4985 0.4986 0.4986
3.0 0.4987 0.4987 0.4987 0.4988 0.4988 0.4989 0.4989 0.4989 0.4990 0.4990
3.1 0.4990 0.4991 0.4991 0.4991 0.4992 0.4992 0.4992 0.4992 0.4993 0.4993
3.2 0.4993 0.4993 0.4994 0.4994 0.4994 0.4994 0.4994 0.4995 0.4995 0.4995
3.3 0.4995 0.4995 0.4995 0.4996 0.4996 0.4996 0.4996 0.4996 0.4996 0.4997
3.4 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4997 0.4998


例題1:硬貨を 1000 回投げて,表が 550 回以上出る確率は二項分布に従うが,標本サイズが大きいので正規分布に従うものと仮定できる。この確率を求めよ。

例解1:母比率 $p = 0.5$ の二項分布の母平均は $\mu = n\ p = 500$,母分散は $\sigma^{2} = n\ p\ ( 1 - p ) = 250$ である。これより, \begin{align*} \Pr\left \{ X \geqq 550 \right \} & = \Pr \left \{ Z \geqq \frac{550-500}{\sqrt{250}} \right \} \\ & = 1-F(3.16)=0.5-\Phi(3.16)=0.0008 \end{align*} 注:正規分布の上側確率の計算を使用することもできる。
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 Z 値

例題2:A 君の身長は $178$ cm,体重は $60$ kg である。A 君が通学している高校の同一学年での身長の平均値は $168$ cm,標準偏差は $6$ cm であり,体重の平均値と標準偏差はそれぞれ $57$ kg,$5$ kg である。身長と体重が正規分布に従うとしたとき,A 君より身長が高いものと体重が重いものはそれぞれ何%くらいいるだろうか。

例解2:身長および体重の標準化得点はそれぞれ,$1.667$,$0.6$ であるから,表を参照してそれぞれ $4.8\%$,$27.4\%$ である。

注:正規分布の上側確率の計算を使用することもできる。


演習問題

 「全国共通テストの得点分布は正規分布に従っており,平均点が $56$ 点,標準偏差が $10$ であった。何点以上であれば上位 $5\%$ に入っているだろうか。」


問題1 上位から $5\%$ のものの標準得点はいくつか。答えは小数点以下 3 桁目で切り捨てた値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

解答欄:    
注:正規分布のパーセント点の計算を使用することもできる。


問題2 問題 1 の答えに対応する得点はいくつか。答えは小数点以下 1 桁目で切り捨て,整数値を解答欄に記入し,送信ボタンをクリックしなさい。

解答欄:    

応用問題


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