偏差値とは,その平均が $50$ 点,標準偏差が $10$ 点となるように,元のテストの得点を換算したものです。
具体的に述べてみましょう。
大勢に対して行われた英語の試験の平均点が $60$ 点,標準偏差が $6$ 点だったとします。A さんの成績は $72$ 点だったとします。
この試験におけるAさんの偏差値は,
偏差値$\ = \displaystyle \frac{72 - 60}{ 6 } \times 10 + 50 = 70$
となります。
それで,この意味付けというか解釈ですが,A さんは試験の成績の良い方から数えてほぼ $2.5\%$ くらいの位置にあるということが理論的に分かります。しかし,その前提として,「英語の試験の成績が正規分布に従っている」ことが必要です。
偏差値の式にある,$\displaystyle \frac{72 - 60 }{ 6 }$ の部分は「標準化得点」と呼ばれます。
標準化得点$\ = \frac{\text{ある人の点数}-\text{平均点}}{\text{標準偏差}}$
標準化得点は,平均値が $0$ ,標準偏差が $1$ になります。もし,英語の得点が正規分布に従っているとしたら,この標準化得点によって偏差値を使うときと同じように,「その標準化得点より大きな得点をとる人が何人いるかが,理論的にわかります。」これは表などにもなっていますが,具体的には以下のようになります。
偏差値 標準得点 その人よりも高い標準得点を持つ者の割合 20 -3.0 99.9 % 25 -2.5 99.4 30 -2.0 97.7 35 -1.5 93.3 40 -1.0 84.1 45 -0.5 69.1 50 0.0 50.0 55 0.5 30.9 60 1.0 15.9 65 1.5 6.7 70 2.0 2.3 75 2.5 0.6 80 3.0 0.1
標準得点が $0$ ということは,「A さんの得点は平均値と同じ」ということで,「A さんはちょうど真ん中に位置している」ということです。
なお,偏差値は理論的には $100$ 点を超えることがあります。しかし,偏差値が $90$ 以上の人は理論的には $0.003\%$ しかいません(超天才ですね)。
もう一度偏差値の式に戻ると,偏差値$=$標準化得点$\times 10+50$ ということなので,標準化得点が $0$ のとき,偏差値は $50$ となります。
結局,標準化得点も偏差値ももとの得点の換算値なのです。このような換算が必要な理由は,以下のようなことから。
同じ日に,数学の試験もあって,その平均値は $40$ 点,標準偏差は $8$ 点だったとします。A さんは数学で $60$ 点とりました。
英語は $72$ 点だったので,A さんは「やっぱり私は数学がだめなんだ」と思いました。
さて,本当にそうでしょうか?
A さんの数学の標準化得点は,$( 60 - 40 ) / 8 = 2.5$ で,偏差値は,$2.5 \times 10 + 50 = 75$ です。先の表からみると,A さんより数学のできた人は $0.6\%$ しかいない,つまり,A さんは非常に数学の成績がよかったことになります。
つまり,偏差値(標準化得点)は教科ごとの平均値と標準偏差を同じになるように揃えた換算値なのです。
そして,上の表があると全体の中での位置が分かるというメリットがあるわけです。
最後に,「全体の中での位置が分かる」のは,もとのテストの得点が正規分布に従うときに限るということです。実際のテストの得点が必ず正規分布に従うという保証はありません。目安として考えることは差し支えないでしょう。
統計学における偏差値というのは以上のようなことなのですが,受験戦争の場で使用されている「偏差値」は別の意味を持って一人歩きしているようですね。
「C 大学の偏差値は $75$ 点」というのは,「あるテストで偏差値 $75$ だった受験生は C 大学に合格できた」というような意味でしょう。