改訂版マンテル・ブライアン法を採用するにあたっての FDA の見解     Last modified: May 15, 2002

FDA ( 1977 ) : Criteria and Procedures for Evaluating Assays for Carcinogenic Residues in Edible Products of Animals. Fed. Regist., 42 , 10412〜10437.

概要は以下の通りである。

用量は飼料中の濃度とする。実験動物とヒトの種差の問題は未解決であるので,今回はとりあえず,実験動物の飼料中の安全レベルをそのままヒトの食物中の安全レベルとする。

安全性評価には高い信頼度が要求されるので,99% 信頼限界を採用する。

外挿に用いる直線の傾きは 1 を採用する。ただし,動物実験により得られた用量 - 反応曲線が 1 より小さい傾きを示すなら 1 より小さい値を採用すべきであろう。

自然発生率が高い動物実験結果を分析する場合には原法では不十分であり,改訂版によらなければならない。

改訂版に示されたデータの統合手続きに対して,FDA は原則的に同意するが,統計学的・生物学的に妥当なデータを選択して統合すべきである。

リスクレベルは $10^{-6}$ を採用する。人口集団は,疾病・事故等の広範な危険要因に曝されているので,$10^{-6}$ を採用しても危険の増加は無視できる程度に小さいだろう。

今回の FDA 見解は,動物用薬剤を対象としている。申請された薬剤について,$10^{-6}$ のリスクレベルに対応する残留物のレベルを $S_0$ とする。また,申請薬とその代謝物について,それぞれの安全用量が求められた場合には,最も低い値を $S_0$ とする。

ヒトの食物摂取パターンに応じて,$S_0$ を控えめに補正する。例えば,米国人の食物摂取調査において,肉と卵は全食事のせいぜい 1 / 3 であるとするならば,肉と卵における残留物に関しては,動物実験により得られた $S_0$ を 3 倍に補正する。ただし,ミルクについては乳幼児の食物摂取の全てであるから補正はしない。

屠殺後の残留物の分解については,今回は考慮しないことにした。ただし,貯蔵と調理によって残留物の毒性が強くなる場合には,FDA は調査を要求する。


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