原法     Last modified: Sep 01, 2015

N. Mantel and W. R. Bryan ( 1961 ) : "Safety" testing of carcinogenic agents. JNCI, 27 , 455 - 470.

 以下の 4 通りの場合について考える。

 いずれの場合も,母比率( 母発癌率 )の信頼限界値を求めることが第一歩である。

 サンプルサイズ( 実験動物数 )を $N$,発癌数を $R$,母比率( 母発癌率 )を $P$,母比率の片側上側 99% 信頼限界値を $P_u$,片側下側 99% 信頼限界値を $P_l$ とする。

発癌数は( 22 )式に示す二項分布に従う。

\[ \Pr\{R=r\} = {}_NC_R\ P^R\ \left (1-P\right )^{N-R} \tag{22} \]


  ( イ ) , ( ロ ) の場合,$P$ の 99% 片側上側信頼限界値は,( 23 )式を $P$ について解くことにより得られる。

\[ \sum_{i=0}^r\ {}_NC_i\ P^i\ \left (1-P\right )^{N-i} = 0.01 \tag{23} \]   ( イ ) の場合は( 23 )式は( 24 )式のように簡単になり,$P$ について解くことにより( 25 )式が得られる。

\[ \begin{align*} (1-P)^N = 0.01 \tag{24} \\[5pt] P_u = 1-\sqrt[N]{0.01} \tag{25} \end{align*} \]  ( ロ ) の場合,数値的に( 23 )式を解くには,二分法などに依らねばならない。

 マンテル・ブライアンの原著にある別法は,二項分布表により $P_u( P_l )$ の近辺の 2 点から内挿( 外挿 )により求めようというものであるが,必要な $N$,$R$,$P$ に関する表が常に手もとにあるということは期待薄であろう。

 この場合には,$F$ 分布を使用することにより,同一の解が求められる。

  $\nu_1 = 2 ( R + 1 )$ ,$\nu_2 = 2 ( N - R )$ ,$F_u$ は自由度 $( \nu_1,\nu_2 )$ ,有意水準 $0.01$ の $F$ 分布の値

  $\nu_1’ = 2 ( N - R + 1 )$ ,$\nu_2’ = 2R$,$F_l$ は自由度 $( \nu_1’,\nu_2’ )$ ,有意水準 $0.01$ の $F$ 分布の値

としたとき,( 26 ),( 27 )式により求めることができる。

\[ \begin{align*} &P_u = \displaystyle \frac{\nu_1\ F_u}{\nu_1\ F_u+\nu_2} \tag{26} \\[5pt] &P_l = \displaystyle \frac{\nu_2'}{\nu_1'\ F_l+\nu_2'} \tag{27} \end{align*} \]  $F$ 分布による場合には $F$ 表の補間が必要となる( $F$ 分布を数値計算出来れば問題はない )。

 $F ( \nu_1,\nu_2 )$ を求めるとき,$\nu_i \lt \nu_1 \lt \nu_j$ である $F_i = F ( \nu_i,\nu_2 )$ ,$F_j = F ( \nu_j,\nu_2 )$ が与えられると,( 28 )式で補間できる。$\nu_1 \gt 120$ のときは,$\nu_i=120$,$\nu_j=\infty$ とすればよい。

\[ F(\nu_1, \nu_2) = F_j+\frac{\displaystyle \frac{1}{\nu_1} - \frac{1}{\nu_j}}{\displaystyle \frac{1}{\nu_i} - \frac{1}{\nu_1}}(F_i-F_j) \tag{28} \]  コンピュータを使用するのが最も簡便な方法である。


 ( ハ ) の場合は,まず,処理群において,( 26 )式で片側上側 99% 信頼限界値 $P_t$ を求める。

次に,対照群において,( 27 )式により片側下側 99% 信頼限界値 $P_c$ を求める。

次に,( 29 ),( 30 )式の Abbott の式により真の発癌率 $P_t'$ の推定値を求める。

\[ \begin{align*} & P_t = P_c+P_t'\ (1-P_c) \tag{29} \\[5pt] & P_t' = \frac{P_t-P_c}{1-P_c} \tag{30} \end{align*} \]


  ( ニ ) の場合は,各用量群毎に ( 対照群は除く ) ( 26 )式で片側上側 99% 信頼限界値を求める。

 更に,理論的に矛盾が生じない場合に処理群をプールしたときについても同様に片側上側 99% 信頼限界値を求める。

 片側上側信頼限界値が求められたら,次は,この比率に対応するプロビット値を求める。正規分布表を使用するか,数値的に計算する。

 次に,用量が 1 / 10 になるとプロビット値が 1 減少するような,傾き 1 のプロビットラインを考え,比例配分により VSD を決定する。

 ( ニ ) の場合には複数個の VSD 値が得られるので,この内で最も大きなVSD値を採用する。


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