アンケート調査などで非常にデリケートな質問に対する正確な情報を得る方法がある。
「あなたはマリファナを使用したことがありますか」というような質問をしたとき,正確な回答は得られそうにない。
そこで,次のような二つの質問(そのうちの一つは回答者にとって無害なものである)を用意しておく。
S:あなたはマリファナを使用したことがありますか?
T:あなたの電話番号の末尾の数字は偶数ですか?
そして,回答者にコイン投げをしてもらい,表が出たら質問Sに,裏が出れば質問Tに,「正確に」答えてもらうことにする。
また,回答者がどちらの質問に答えたかは調査者にはわからないようにしておき,情報の秘密は守られるものとする。
このようにして得られた回答結果から,マリファナを使用したことのある者の割合を以下のようにして推定することができる。
π=マリファナを使用したことのある者の割合。未知である。
λ=電話番号の末尾が偶数である割合。既知である。
p=「はい」と答えた者の割合。調査の結果得られる値。
このとき,π+λ=2pが成立し,したがってπの推定値は,
π=2p−λ
出処:「統計学とは何か−−偶然を生かす−−」,C. R. Rao,藤越ら訳,丸善株式会社,1993.