問:「仮説に方向性があるときは片側検定を行う」というようなことを聞いたことがありますが、両側検定でいう10%水準となり有意差が出やすくなりますから、なんだか恣意的な感じがします。
 標本サイズ,帰無仮説・対立仮説,検定手法は,データが集められる前に設定されるべきものですから,仮説検定を行う時点では,対立仮説に方向性があるかないかは明らかなわけです。帰無仮説に方向性がある場合は片側検定になります。ただ,実際に収集されたデータの方向性が,予定されていた方向性に一致しないときは悲劇的な結果を招くことになります。もっとも,そのような場合には「検定を行わない」というのが結論になると思います。

 例えば正規分布を利用する検定では z=2 なら,両側検定では有意ではないですが,片側検定では有意ですね。しかし,これは,恣意的ということではなく,方向性を持っているという情報が付加されているから有意ということです。従って,方向性が明らかでない場合には*片側検定は使用できない*ということです。

 片側検定が使われるのは,旧薬と新薬の比較試験などがよく説明に取り上げられると思います。すなわち,新薬は旧薬より効くはずであるという対立仮説なのですね。データをみて新薬が旧薬より効かないようであれば,検定など行うまでもなくその新薬は捨てられることになるはずです(...で,いいんですかね)。

 社会科学なども含め一般的な状況では,検定は両側検定として行われると思います。

 なお,繰り返しますが,「対立仮説の方向性(片側検定と両側検定のいずれを採用するか)はデータを見る前に決められているべきだ」ということを心に留めておくことが必要です。また,有意な結果が出るように(あるいは,出ないように)検定手法を探索するのは,お行儀の悪いことだとされています。さらに,標本サイズさえ大きくすればどのような小さな差(関連)も統計学的には有意にできるということも付記しておきましょう。


Last modified: May 15, 2002

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